36協定を毎年更新している会社へ|健康福祉確保措置が形だけになっていませんか?

こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、社会保険労務士の関谷です。

社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。

特別条項付き36協定を締結している会社では、長時間労働になった場合に行う「健康福祉確保措置」を協定に定めます。

大切なのは、その内容を36協定に書いておくだけではなく、実際に必要になったときに実行できる状態になっているかという点です。この記事では、36協定を更新するときに確認しておきたいポイントを整理します。

目次

健康福祉確保措置とは何でしょうか?

特別条項を使って長時間労働になった従業員の健康を守るため、会社があらかじめ決めておく対応です。

36協定では、時間外労働は原則として月45時間・年360時間までとされています。

ただし、通常予想することのできない業務量の大幅な増加など、臨時的な特別の事情がある場合には、特別条項を設けることでこの限度時間を超えて働いてもらうことがあります。

その際に重要になるのが「健康福祉確保措置」です。

簡単にいうと、

長時間働くことになった従業員の健康を守るため、会社としてどのような対応をするのか

を労使で決めておくものです。

厚生労働省では、例えば次のような措置を示しています。

・医師による面接指導
・深夜勤務の回数を抑える
・勤務と勤務の間に休息時間を確保する
・代償休日や特別な休暇を与える
・健康診断を実施する
・連続した休暇を取得できるようにする
・心身について相談できる窓口を設置する
・配置転換を行う
・産業医などによる助言や保健指導を行う

特別条項付き36協定の様式にも、こうした措置を選び、その具体的な内容を記載する欄があります。

36協定に書いてあれば十分なのでしょうか?

健康福祉確保措置は36協定に記載するだけではなく、対象となる従業員が出たときに実際に実施することが大切です。

ここが今回、特に確認しておきたいところです。

36協定を作成するときには、健康福祉確保措置として何らかの内容を選びます。

しかし、毎年同じ内容で36協定を更新していると、

「なぜこの措置を選んだのか」

「実際には誰が対応するのか」

「今でもこの措置を実施できるのか」

というところまで確認しなくなることがあります。

例えば、協定上は「医師による面接指導」を行うことになっていても、実際に対象者が出た場合に、

・誰に依頼するのか
・どのような流れで実施するのか
・社内の担当者は誰なのか

が決まっていなければ、すぐに対応できない可能性があります。

36協定は、労働基準監督署に提出するための書類というだけではありません。

会社と従業員との間で決めた労働時間のルールです。

だからこそ、記載した内容を実際に運用できるかまで確認しておくことが大切です。

なぜ今、実施できるかの確認が重要なのでしょうか?

2026年9月から監督指導の着眼点が見直され、特別条項を利用する場合の健康確保への取組がこれまで以上に重要になっています。

2026年9月から、特別条項付き36協定を締結している事業場に対する労働基準監督署の指導運用が見直されています。

これまでのように、

「月45時間を超えているので、45時間以内に減らしてください」

と時間数だけを見て一律に指導するのではなく、36協定の内容や健康福祉確保措置なども踏まえて確認していく方向になっています。

ただし、これは残業規制そのものが緩くなったという話ではありません。

法律上の時間外労働の上限規制は引き続き存在しますし、厚生労働省も、限度時間を超える労働は臨時的な特別の事情がある場合に限られ、恒常的な長時間労働を招くものは認められないと示しています。

そのうえで、

特別条項を使うのであれば、そこで定めた健康確保のための取組もきちんと実施する

ということが、これまで以上に重要になります。

36協定を更新するときに何を点検すればよいのでしょうか?

前年の36協定をそのまま使うのではなく、現在の会社で本当に実施できる内容になっているか確認してから更新することをおすすめします。

特別条項付き36協定を更新するときには、少なくとも次の点を確認してみてください。

STEP
どの健康福祉確保措置を選んでいるか

まず、現在の36協定を実際に見てみましょう。

特別条項の欄に、健康福祉確保措置として何を定めているでしょうか。

意外と、

「毎年同じ様式を使っているので覚えていない」

ということもあります。

まずは現在の協定内容を把握することがスタートです。

STEP
その措置を今でも実施できるか

次に重要なのが実行可能性です。

例えば、

「医師による面接指導」

を選んでいるのであれば、必要になったときに依頼できる体制があるでしょうか。

「勤務間インターバル」

を選んでいるのであれば、勤務シフトや業務体制のうえで実際に休息時間を確保できるでしょうか。

「相談窓口の設置」

であれば、相談先が従業員に周知され、現在も機能しているでしょうか。

制度を選ぶときは、

「書きやすいから」

ではなく、

自社で実際に運用できるか

という視点が重要です。

STEP
対象者が出たときの流れが決まっているか

誰が、

「この従業員は健康福祉確保措置の対象になる」

と判断するのでしょうか。

勤怠を確認する担当者なのか、経営者なのか、人事担当者なのか。

そして対象者が出たら、

1.誰が確認するのか
2.誰に連絡するのか
3.どの措置を実施するのか
4.実施した記録をどう残すのか

という流れまで決めておくと、必要になったときに慌てずに済みます。

STEP
そもそも特別条項が必要なのかも確認する

「念のため特別条項を付けている」という会社もあると思います。

しかし、特別条項は、臨時的な特別の事情がある場合に限って限度時間を超えるための制度です。

厚生労働省も、限度時間を超えて時間外労働をさせることができるのは「臨時的な特別の事情」がある場合に限るとしています。

毎年ほとんど特別条項を使わないのであれば、

「今後、本当に必要になる可能性があるのか」

まで考えてみてもよいでしょう。

反対に、頻繁に特別条項を使っている場合には、業務量や人員配置そのものについて確認が必要かもしれません。

勘違いしやすいポイントは?

監督署が措置の内容を見るからといって、「立派な制度」を作ればよいのではなく、自社で継続して実行できることが重要です。

健康福祉確保措置という言葉を見ると、

「できるだけ手厚い内容にしておいた方がよいのではないか」

と思うかもしれません。

しかし、無理に立派な制度を決めても、実施できなければ意味がありません。

例えば、

「産業医等による助言・指導」

を選んでも、実際にはそのような体制がないのであれば運用に困ってしまいます。

36協定の内容は、会社の規模や業務内容、働き方などを考えながら、労使で話し合って決めることが大切です。

できるだけ立派な制度を書くことではなく、自社で責任を持って実施できる内容を決める。

この視点が重要だと思います。

よくある質問

特別条項をほとんど利用していない会社でも、実際に利用する可能性がある以上、協定内容を確認しておくことが大切です。

Q. 特別条項を一度も使っていません。それでも確認が必要ですか?

一度も使っていない場合でも、今後利用する可能性があるのであれば、一度確認しておくことをおすすめします。

久しぶりに特別条項を使う必要が出たときに、

「協定に書いてある措置を実施できない」

とならないよう、36協定を更新するタイミングで確認しておくと安心です。

Q. 健康福祉確保措置は何を選べばよいのでしょうか?

会社の規模や業務内容、勤務形態などによって適した内容は異なります。

「ほかの会社がこれを選んでいるから」という理由だけではなく、自社で実際に運用できるかを考えて決めることが大切です。

Q. 毎年同じ36協定を提出してはいけないのでしょうか?

前年と同じ内容であること自体が問題というわけではありません。

ただし、

現在の働き方や社内体制と内容が合っているかを確認したうえで同じ内容にする

のと、

前年のファイルの日付だけ変えて提出する

のとでは意味が大きく違います。

少なくとも年に一度は、内容を見直す機会にしていただきたいと思います。

まとめ

36協定は提出して終わりではなく、「書かれている内容を本当に実施できるか」という視点で毎年点検することが大切です。

特別条項付き36協定では、限度時間を超えて働く従業員の健康を守るため、健康福祉確保措置を定めます。

厚生労働省も、長時間労働になるほど健康障害のリスクが高まることを踏まえ、定めた健康福祉確保措置を適切に実施するよう示しています。

会社として確認したいのは、

・どの健康福祉確保措置を定めているか
・現在も実施可能な内容か
・誰が対応するのか
・対象者が出たときの流れが決まっているか
・特別条項そのものが現在の働き方に合っているか

という点です。

36協定を毎年更新している会社ほど、一度現在の協定を開いて確認してみてください。

「去年もこれで出したから今年も同じ」ではなく、「今年もこの内容を実行できるか」まで確認する。

この一手間が、36協定を実際に機能するルールにするためには大切だと思います。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント

特別条項付き36協定では、健康福祉確保措置を記載するだけでなく、対象者が出たときに確実に実施できる体制まで整えておくことが重要です。

※36協定や監督指導の取扱いについては今後変更される可能性があります。実際の対応にあたっては最新の厚生労働省・労働局の情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

「おっきなでんしゃ社会保険労務士事務所」代表の関谷と申します。豊かな自然とあたたかい人々に恵まれたこの新潟の地で、家族とともに日々の暮らしを楽しみながら、社会保険労務士として地域の企業様中心にをサポートさせていただいております。

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