
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、
社会保険労務士の関谷です。
育児休業から復職したあと、時短勤務などにより給与が下がるケースがあります。
そのとき
- 社会保険料はどうなるのか
- 給与が下がったのに保険料は変わらないのか
と疑問に感じることもあるかもしれません。
こうしたケースに対応する制度として
「育児休業復帰時月額変更(育児休業等終了時改定)」があります。
この記事では、育児休業復帰時月額変更(育児休業等終了時改定)について解説します。
- 制度の目的
- 対象になるケース
- 社会保険料が見直される仕組み
- 手続きの流れ
- 制度を利用する際の注意点
などをわかりやすく整理します。
初めて制度に触れる方でも、
全体像と実務のポイントがイメージできる内容になっています。
詳しい制度や手続きの具体的な内容について知りたい方は、
記事の最後にある公式資料をあわせてご確認ください。
なお、この記事は「出産〜復職までの制度シリーズ」の9記事目です。
出産から復職までには、さまざまな制度や給付金があります。
出産から復職までの制度全体については以下の記事でまとめて解説しています。
▶ 「 育児休業とは?出産前から復職までの制度・給付金・手続きの流れをわかりやすく解説」
※前回の記事
▶ 「⑧出生後休業支援給付金とは?支給額・条件・産後パパ育休との関係を解説」
育児休業復帰時月額変更とは?
育児休業復帰時月額変更とは育児休業から復職して給与が下がった場合に、
本人からの申出により社会保険料を見直す制度です。
育児休業復帰時月額変更とは、
正式には 「育児休業等終了時改定」と呼ばれる制度です。
育児休業から復職したあとに
- 時短勤務
- 勤務時間の変更
などにより給与が下がることがあります。
通常、社会保険料は標準報酬月額をもとに決まります。
標準報酬月額とは社会保険料を計算するときに使う給与の目安額のことです。
しかし通常の仕組みでは、給与が下がってもすぐには保険料が変わらない場合があります。
そこで、育児休業から復職した場合には早めに社会保険料を見直す仕組みが用意されています。
なぜこの制度があるのか?
復職後の給与に合わせて社会保険料を早く調整するための制度です。
通常の社会保険の仕組みでは、標準報酬月額の見直しは
- 年1回の定時決定(算定基礎届)
- 随時改定(月額変更届)
などで行われます。
しかし、育児休業から復職した場合は
- 時短勤務
- 勤務時間の変更
などにより給与が大きく変わることがあります。
この制度があることで、
復職後の給与水準に合わせて社会保険料を調整できるようになっています。
育児休業復帰時月額変更は復職後の給与変動に対応する特例制度です。
| 制度 | 目的 |
|---|---|
| 定時決定(算定基礎届) | 毎年1回 社会保険料を見直す手続 |
| 随時改定(月額変更) | 通常の給与変動に対応 |
| 育児休業復帰時月額変更 | 育休復職後の給与変動に対応 |
本人からの申し出が必要
この制度は自動ではなく、本人の希望があってはじめて使える仕組みです。
育児休業から復帰したあとの社会保険料の見直しは、実は「自動で行われるもの」ではありません。
通常の随時改定(※大きく給与が変わったときの見直し)であれば、
条件を満たしていれば、従業員の意思に関係なく会社に手続きの義務が生じます。
一方で、育児休業からの復帰時に行う見直しは、
本人の希望があってはじめて手続きができる仕組みになっています。
そのため、制度を知らないままだと、
本来は社会保険料を見直せたはずなのに、手続きされずそのまま…というケースも考えられます。
会社として気をつけたいポイント
制度を活かすためには、会社側の対応も大切です。
・制度の内容をシンプルに伝える
・手続きすることでどんなメリットがあるかを説明する
・希望するかどうかを本人に確認する
といった対応をしておくことで、
「知らなかった」という理由で不利益が出てしまうのを防ぎやすくなります。
育児休業復帰時月額変更の対象になるケース
育児休業から復職し給与が変わった場合に対象になることがあります。
育児休業復帰時月額変更は、次のようなケースで対象になります。
- 育児休業から復職した
- 復職後に給与が変わった
- 復職後の給与をもとに社会保険料を見直す必要がある
特に多いのは
- 時短勤務制度を利用している
- 勤務条件の変更により勤務時間が短くなっている
といったケースです。
対象になる人チェックリスト
育児休業から復帰したあと、以下の条件をすべて満たす場合は対象となります。
- 育児・介護休業法に基づく育児休業等終了日に3歳未満の子を養育していること
- 従前の標準報酬月額と、変更後の標準報酬月額の間に1等級以上の差が生じること
- 育児休業終了日の翌日が属する月以後3ヵ月のうち、少なくとも1ヵ月で支払基礎日数(※)が17日以上(短時間労働者は11日以上)あること
(※)支払基礎日数とは、賃金や報酬の支払いの対象となる日数のことです。
社会保険料が見直されるタイミング
復帰した月の翌月から3カ月分の給与の平均をもとに、4カ月目から社会保険料の等級を見直すことができます。
復職してすぐに社会保険料が変わるわけではありません。
育児休業復帰時月額変更では、
育児休業終了日の翌日が属する月以後3カ月間に受けた報酬の平均額に基づき、
4カ月目の標準報酬月額から改定することができます。
復職後に給与が上がった場合はどうなる?
給与が上がった場合は制度の対象になりません。
この制度は給与が下がった場合に利用される制度です。
そのため
- 給与が変わらない
- 給与が上がった
場合には、制度を利用する必要がありません。
制度を利用する際の注意点(デメリット)
社会保険料が下がる一方で、将来の年金額や給付額に影響する場合があります。
育児休業復帰時月額変更は、復職後の給与に合わせて社会保険料を調整できる制度です。
そのため、時短勤務などで給与が下がった場合には、社会保険料の負担を軽くできるメリットがあります。
一方で、制度を利用する際にはいくつか注意しておきたいポイントもあります。
将来の年金額が少なくなる可能性
標準報酬月額が下がると、将来の厚生年金額が少なくなる可能性があります。
ただし、養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置を利用することで、
育休前の給与水準を基準に年金額を計算することができます。
こちらの制度については、
次回の記事「⑩養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは?年金が減らない制度」で詳しく説明します。
出産手当金・傷病手当金が少なくなる可能性
出産手当金や傷病手当金は、標準報酬月額をもとに支給額が計算されます。
そのため標準報酬月額が下がると
の支給額が少なくなる可能性があります。
特に
- 出産予定
- 病気やケガによる休職
などが想定される場合には、この点も理解しておくことが大切です。
手続きの流れ(提出書類・提出期限)
会社が「育児休業等終了時報酬月額変更届 厚生年金保険 70歳以上被用者育児休業等終了時報酬月額相当額変更届」を年金事務所へ提出して社会保険料を見直します。
手続きの流れ
① 育児休業から復職
② 復職後の給与状況を確認
③ 本人からの申出により会社が上記書類を年金事務所へ提出
④ 標準報酬月額が見直される
提出期限
この制度では
- 復職
- 復職後の給与確認
- 届出提出
という流れになります。
そのため、復職直後ではなく
復帰後3カ月間の給与が確定した後、速やかに会社が届出を提出することになります。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置との関係
保険料を調整する制度と将来の年金を守る制度があります。
育児休業復帰後に給与が下がった場合には
- 育児休業復帰時月額変更 → 現在の社会保険料を調整
- 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置 → 将来の年金額を守る
という2つの制度が関係します。
よくある質問
Q 必ず手続きを行う必要がありますか?
必ず行う必要があるわけではありません。
復職後の給与が下がっている場合には、
社会保険料を実態に合わせて調整できる可能性があります。
Q 手続きは誰が行いますか?
手続きは会社(事業主)が年金事務所へ届出を行います。
Q 時短勤務の場合は必ず対象になりますか?
時短勤務でも必ず対象になるわけではありません。
従前の標準報酬月額と変更後の標準報酬月額の間に1等級以上の差が生じることが
条件のひとつになっています。
まとめ
育児休業から復職したあと、時短勤務などにより給与が下がるケースがあります。
その場合、育児休業復帰時月額変更(育児休業等終了時改定)という制度を利用することで、
復職後の給与水準に合わせて社会保険料を調整できる可能性があります。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
育児休業復帰後に給与が下がった場合は社会保険料を見直すための制度があります。
公式資料
より詳しく制度内容を確認したい方は、こちらをご覧ください。
・育児休業等終了後に受け取る報酬に変動があったとき(日本年金機構)
次の記事
次の記事は「⑩養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは?年金が減らない制度」です。
育児中に給与が下がった場合でも将来の年金額への影響を抑える制度です。
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