
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、
社会保険労務士の関谷です。
従業員の出産や育児に関する制度は、実は「育児休業」だけではありません。
出産前から復職後まで、さまざまな制度や手続きが関係してきます。
この記事では、出産前から育児休業、復職後までの制度の全体像を整理します。
「どのタイミングで、どんな制度や手続きがあるのか」を流れで理解できるようにまとめました。
各制度の説明は、今後の記事でそれぞれ詳しく解説していきます。
出産から育休復帰まで、どんな制度があるのでしょうか?
出産前から復職までには、健康保険・雇用保険・年金など複数の制度が順番に関係します。
育児休業と聞くと「休む制度」というイメージが強いですが、
実際には次のように複数の制度が時系列で関係してきます。
出産から復職までの主な流れは次の通りです。
出産〜復職までの主な制度
このように、出産から復職までの期間には、
健康保険・雇用保険・年金制度がそれぞれ関係しているのが特徴です。
出産前後の期間に関係する制度
出産前後は主に健康保険の制度が関係します。
代表的な制度は次の通りです。
産前産後休業中の保険料免除
出産のために会社を休んでいる期間は、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。
本人負担・会社負担の両方が免除になります。
出産手当金
産前産後休業中に給与が支払われない場合、健康保険から賃金の約3分の2が支給されます。
いわば、出産のために働けない期間の生活を支える制度です。
出産育児一時金
出産費用の負担を軽くするための制度です。
原則として、1児につき50万円が支給されます。
多くの場合は、医療機関へ直接支払われる仕組みになっています。
高額療養費(帝王切開など)
通常の出産は保険診療ではありませんが、帝王切開などの医療行為が必要な場合は
健康保険の対象となります。
この場合、医療費が高額になると高額療養費制度が利用できることがあります。
育児休業中に関係する制度
育児休業中は雇用保険の給付と社会保険料免除が関係します。
育児休業中は、主に次の制度が関係します。
育児休業中の保険料免除
育児休業中も
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
が免除されます。
こちらも、本人負担・会社負担の両方が免除になります。
育児休業給付金
雇用保険の制度で、育児休業中の生活を支える給付です。
給付率は
- 最初の6か月:67%
- それ以降:50%
となっています。
出生時育児休業給付金
いわゆる「産後パパ育休」を取得した場合に支給される給付金です。
出生後8週間以内に取得する育休が対象で、最大28日分支給されます。
出生後休業支援給付金
2025年に創設された制度です。
両親ともに育児休業を取得する場合、
育児休業給付金に13%が上乗せされる仕組みです。
復職後に関係する制度
復職後は給与変動に関係する社会保険や給付制度があります。
育児休業から復職した後にも、いくつかの制度があります。
育児休業復帰時月額変更
育児休業から復職すると
- 時短勤務
- 働き方の変更
などで給与が下がるケースがあります。
この場合、通常より早く社会保険の等級を見直す制度があります。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
3歳未満の子を養育している期間に給与が下がった場合でも、
将来の年金は下がる前の給与で計算する制度です。
育児時短就業給付金
2025年に新しく始まった制度です。
育児のために時短勤務をして賃金が下がった場合、
賃金の約10%相当が給付される仕組みです。
会社として押さえておきたいポイント
育児関係の制度は複数の制度が重なっているため、全体像を理解しておくことが大切です。
出産や育児に関する制度は、
- 健康保険
- 雇用保険
- 年金制度
など、複数の制度が組み合わさっているのが特徴です。
そのため
- どのタイミングで
- どんな手続きが必要か
を、全体の流れで理解しておくことが大切になります。
よくある質問
Q. 男性も育児休業を取得できますか?
A. はい、男性も育児休業を取得することができます。
育児休業は、子どもを養育するための制度のため、男女どちらの労働者でも取得できる制度です。
近年は男性の育児参加を促進するため、
- 産後パパ育休(出生時育児休業)
- 出生後休業支援給付金
など、男性が育児休業を取得しやすくする制度も整備されています。
Q. 育児休業給付金はいつまで支給されますか?
A. 原則として、育児休業給付金は子どもが1歳になる前日まで支給されます。
ただし、次のような事情がある場合は延長できることがあります。
- 保育所に入れない場合
- 配偶者が育児できない事情がある場合
この場合、1歳6か月または2歳まで延長されるケースがあります。
Q. 育児休業中でも働くことはできますか?
A. 条件の範囲内であれば、育児休業中でも働くことは可能です。
育児休業給付金を受けながら働く場合は、
1か月の支給単位期間の中で
- 10日以内
- または 80時間以内
であれば、原則として給付金の支給対象となります。
ただし、働き方によっては給付金が減額されたり、支給されない場合もあるため、
事前に確認しておくことが大切です。
Q. 育児休業と産前産後休業の違いは何ですか?
A. 産前産後休業は出産のための休業、育児休業は子どもを育てるための休業という違いがあります。
産前産後休業は、出産の前後に取得する休業で、
出産する従業員の健康を守るための制度です。
一方、育児休業は、子どもを養育するために取得する休業で、
男女どちらの労働者でも取得することができます。
一般的には、
産前産後休業 → 育児休業 → 復職
という順番で制度を利用するケースが多くなります。
Q. 育児休業の取得を会社は拒否できますか?
A. 原則として、育児休業の取得を会社が拒否することはできません。
育児休業は、法律(育児・介護休業法)で定められている制度のため、
要件を満たす労働者から申し出があった場合、会社は原則として取得を認める必要があります。
ただし、会社によっては就業規則等で対象者の条件を定めていることもあり、
次のような場合は対象外となることがあります。
- 入社して間もない場合
- 契約社員などで雇用期間の定めがあり、一定の条件を満たしていない場合
そのため、実際には
- 雇用形態
- 勤続期間
- 就業規則等の内容
などによって取り扱いが変わることがあります。
まとめ
出産から復職までの期間には、
- 健康保険の給付
- 雇用保険の給付
- 社会保険料の免除
- 年金の特例制度
など、多くの制度が関係します。
今回の記事では、
出産前から復職までの制度の全体像を整理しました。
今後の記事では、それぞれの制度についてもう少し詳しく解説していきます。

社会保険労務士 関谷聡の実務ワンポイント
出産前から復職後までには複数の制度が順番に関係するため、
まずは全体の流れを理解することが大切です。
出産〜復職までの制度一覧
出産から復職までには、さまざまな制度や給付金があります。
それぞれの制度について、今後個別の記事で詳しく解説していきます。
気になる制度があれば、以下の記事も参考にしてみてください。
①産前産後休業中の保険料免除
産前産後休業中は健康保険料と厚生年金保険料が免除される制度です。
▶ ①産前産後休業中の社会保険料はどうなる?保険料免除の仕組みと手続きを解説
②出産手当金
産前産後休業中に給与が支払われない場合に生活を支えるための給付です。
▶ ②出産手当金とは?支給条件・支給期間・申請方法をわかりやすく解説
③出産育児一時金
出産費用の負担を軽くするために支給される健康保険の制度です。
▶ ③出産育児一時金とは?いくらもらえる?直接支払制度も解説
④高額療養費(帝王切開などの場合)
医療費が高額になった場合に自己負担額を抑えることができる制度です。
▶ ④高額療養費制度とは?出産時(帝王切開など)の医療費負担を解説
⑤育児休業中の保険料免除
育児休業中は健康保険料と厚生年金保険料が免除される制度です。
▶ ⑤育児休業中の社会保険料はどうなる?保険料免除の仕組みを解説
⑥育児休業給付金
育児休業中の生活を支えるために支給される雇用保険の給付金です。
▶ ⑥育児休業給付金とは?支給額・条件・いつまで受け取れるか解説
⑦出生時育児休業給付金(産後パパ育休)
子どもの出生直後に父親が育児休業を取得した場合に支給される給付金です。
▶ ⑦産後パパ育休(出生時育児休業給付金)とは?支給額・条件・申請方法を解説
⑧出生後休業支援給付金
男性の育児休業取得を促進するために追加された雇用保険の給付制度です。
▶ ⑧出生後休業支援給付金とは?支給額・条件・産後パパ育休との関係を解説
⑨育児休業復帰時月額変更
育児休業から復職して給与が下がった場合に社会保険料を見直す制度です。
▶ ⑨育児休業復帰時の社会保険料はどうなる?月額変更の仕組みを解説
⑩養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
育児によって給与が下がっても将来の年金額に影響しないようにする制度です。
▶ ⑩養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは?年金が減らない制度
⑪育児時短就業給付金
復職後に時短勤務をした場合の収入減少を補う雇用保険の制度です。
▶ ⑪育児時短就業給付金とは?2025年開始の時短勤務の給付制度
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