
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、
社会保険労務士の関谷です。
育児休業から復職したあと、時短勤務などで給与が下がるケースがあります。
そのとき
- 将来の年金は減ってしまうの?
- 社会保険料が下がると年金額も下がるのでは?
と心配になる方もいるかもしれません。
こうした不安を軽減する制度として、
「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」があります。
この記事では、養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置について解説します。
- 制度の目的
- 対象になるケース
- 将来の年金額への影響
- 手続きの流れ
- 制度を利用する際の注意点
などをわかりやすく整理します。
初めて制度に触れる方でも、
全体像と実務のポイントがイメージできる内容になっています。
詳しい制度や手続きの具体的な内容について知りたい方は、
記事の最後にある公式資料をあわせてご確認ください。
なお、この記事は「出産〜復職までの制度シリーズ」の10記事目です。
出産から復職までの制度全体については、以下の記事でまとめて解説しています。
▶ 「育児休業とは?出産前から復職までの制度・給付金・手続きの流れをわかりやすく解説」
※前回の記事
▶ 「⑨育児休業復帰時の社会保険料はどうなる?月額変更の仕組みを解説」
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは?
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置とは、
子どもを養育している期間に給与が下がった場合でも、将来の年金額を以前の給与水準で計算してくれる制度です。
通常、厚生年金は標準報酬月額をもとに将来の年金額が計算されます。
標準報酬月額とは社会保険料を計算するときに使う給与の目安額のことです。
そのため、育児中に
- 時短勤務
- 勤務時間の変更
などで給与が下がると、将来の年金額も少なくなる可能性があります。
この制度を利用すると、
育休前の標準報酬月額を基準として年金額を計算してもらえる仕組みになります。
なぜこの制度があるのか?
育児による働き方の変化で年金が不利にならないようにするための制度です。
育児中は
- 時短勤務
- 残業の減少
- 勤務時間の調整
などにより給与が下がることがあります。
しかし、それによって将来の年金額まで減ってしまうと
子育て世帯にとって大きな負担になります。
そのため、育児による働き方の変化が将来の年金額に不利に働かないようにする制度
として、この仕組みが設けられています。
どんな場合に対象になる?
子どもが3歳になるまでの養育期間に給与が下がった場合に対象になります。
一般的には、次のようなケースで対象になる可能性があります。
- 3歳未満の子どもを養育している
- 育児の影響で給与が下がった
例えば
- 時短勤務になった
- 残業をしなくなった
- 契約内容を変更し、勤務時間が短くなった
といったケースです。
なお、この制度は母親だけでなく父親も利用できます。
ただし、子どもを育て始める月の前までの1年間に、
厚生年金に加入していた期間がない場合は、この制度の対象外となるため注意が必要です。
制度のイメージ
保険料は下がっても年金額は以前の給与を基準に計算されます。
例えば次のようなケースです。
育休前の給与:30万円
復職後の給与:22万円(時短勤務)
この場合、社会保険料 → 復職後の給与22万円に合わせて下がる
一方で、将来の年金額 → 30万円を基準に計算
という仕組みになります。
つまり、保険料は下がるが、年金額は守られるという制度です。
育児休業復帰時月額変更との違い
保険料を調整する制度と年金額を守る制度の違いがあります。
育児休業復帰後に給与が下がった場合、次の2つの制度が関係します。
- 育児休業復帰時月額変更 → 現在の社会保険料を調整
- 養育期間のみなし措置 → 将来の年金額を守る
実務では、この2つの制度をセットで利用するケースが多いです。
手続きの流れ
会社を通じて年金事務所へ届出を行うことで制度を利用できます。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置は申請しないと適用されない制度です。
一般的な流れは次のとおりです。
① 3歳未満の子どもを養育していることを確認
② 会社の社会保険担当者へ相談
また、被保険者の環境や条件に応じて、いくつかの添付書類を準備する必要があります。
例えば
- 戸籍謄本
- 住民票
などが必要になる場合があります。
そのため、手続きを進める際には、事前に年金事務所へ確認しておくと安心です。
④ 年金事務所へ届出
⑤ 制度が適用される
養育期間が終わったら必ず手続きが必要?
終了時の手続きはケースによって必要・不要が分かれます。
養育期間が終了したときは、必ずしも全員が手続きをするわけではありません。
以下のケースに該当した場合「厚生年金保険養育期間標準報酬月額特例終了届」の提出が必要になります。
- 親権を持たなくなった場合(離婚や養子縁組によって他の方が養育することになった場合)
- お子さんが亡くなられた場合
申請期限と申請を忘れた場合
この制度は子どもが3歳になるまで申請でき、申請漏れがあっても2年間は遡及して申請できます。
養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置は、子どもが3歳になるまでの養育期間について申請できます。
ただし、この制度は申請を行わないと適用されない制度です。
そのため、制度を知らなかった場合や手続きを忘れてしまった場合には、
制度が適用されていないケースもあります。
ただし、申請漏れがあった場合でも2年間は遡及して申請することが可能とされています。
そのため
- 制度を最近知った
- 申請を忘れていた
といった場合でも、対象期間が2年以内であれば申請できる可能性があります。
対象になりそうな場合は、会社の社会保険担当者へ相談しておくと安心です。
制度を利用する際の注意点
年金額を守る制度ですが、利用する際にはいくつか注意点があります。
①年金額を増やす制度ではない
この制度は年金額を増やす制度ではありません。
あくまで育児前の給与水準を基準に年金額を計算する制度です。
②申請しないと適用されない
この制度は自動で適用される制度ではありません。
そのため、対象になる場合でも申請を行わないと制度が適用されない可能性があります。
よくある質問
Q 母親だけが利用できる制度ですか?
いいえ、父親でも利用できます。
子どもを養育している被保険者であれば男女問わず利用できます。
Q 時短勤務をしていなくても対象になりますか?
必ずしも時短勤務である必要はありません。
例えば
- 残業が減った
- 勤務時間が減った
などで給与が下がった場合も対象になる可能性があります。
まとめ
育児中は働き方の変化により給与が下がるケースがあります。
その場合でも養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置を利用することで、
将来の年金額への影響を抑えることができます。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
育児中に給与が下がっても将来の年金額を守る制度があります。
なお、本記事は執筆時点の情報をもとに作成しています。制度内容は変更される可能性がありますので、最新情報は公的機関の案内なども確認するようにしてください。
公式資料
より詳しく制度内容を確認したい方は、こちらをご覧ください。
・養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置(日本年金機構)
・養育期間が終了したときの手続き(日本年金機構)
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復職後に時短勤務をした場合の収入減少を補う雇用保険の制度です。
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