
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、
社会保険労務士の関谷です。
日々のご相談の中で、「これってどう扱えばいいのか迷う」というテーマを分かりやすくお伝えしています。
ハラスメント対応窓口についてのご相談をいただいた際に、「公益通報者保護法の窓口も同じものですか?」というご質問がありました。
そこで今回は「公益通報者保護法」とその改正内容について、やさしく整理します。
この記事では、その違いとあわせて、企業として気をつけたい実務対応のポイントについて解説します。
公益通報者保護法とはどんな制度?
不正を見つけた人が不利益を受けずに通報できる仕組みです。
公益通報者保護法は、会社の中の不正や法令違反を知った人が、安心して通報できるようにするための法律です。
ここでいう「公益通報」とは、簡単にいうと
会社の違法行為やルール違反を外部や内部に知らせることです。
この制度の目的は2つあります。
- 通報した人を守ること
- 会社の問題を早めに見つけて是正すること
つまり、企業にとっても「リスク管理の仕組み」として重要な制度です。
■ 通報できる人・内容・通報先の全体像
制度を理解するうえで、まずは全体像をシンプルに押さえておきましょう。
①通報できる人
一般的には、次のような立場の人が対象になります。
- 会社で働いている人(正社員・パートなど)
- 役員
- フリーランス
- 退職してから1年以内の人
つまり、「その会社の不正を知りうる立場の人」が広く含まれます。
②通報できる内容
公益通報の対象となるのは、公益通報者保護法や政令で定められた法律に違反する犯罪行為や過料にあたる行為であり、全ての法令違反行為ではありません。
- 法令違反(法律に違反している行為)
- そのおそれがある行為
例えば、
- 不正な会計処理
- 個人情報の不適切な取扱い
などが該当します。
③通報できる先
通報先は大きく3つに分かれます。
① 会社内部(内部通報窓口)
② 行政機関(監督官庁など)
③ 外部(報道機関など)
ただし、どこに通報するかによって、保護されるための条件が異なる点には注意が必要です。
上記①~③の詳細については、「公益通報者保護法知っていますか?(消費者庁)」をご参照ください。
■ 会社の規模によって義務の重さが違う
公益通報制度の体制整備については、会社の規模によって位置づけが異なります。
- 常時使用する労働者が301人以上の企業 → 内部通報体制の整備が義務
- 常時使用する労働者が300人以下の企業 → 努力義務(できる範囲で整備が求められる)
■ 勘違いしやすいポイント
「うちは努力義務だから対応しなくてもいい」と考えてしまうケースがありますが、
実務上は、
- トラブルの早期発見
- 外部通報のリスク低減
といった観点から、規模にかかわらず一定の整備をしておく必要があるといえます。
ハラスメント窓口と何が違うのか?
ハラスメント窓口は職場環境の問題、公益通報は法令違反の問題と、目的が異なります。
先ほどのご質問にもあったように、ハラスメント対応窓口と公益通報の窓口は、似ているようで役割が異なります。
この2つの違いを整理しておきましょう。
■ ハラスメント窓口
- パワハラ・セクハラなどの職場トラブル対応
- 職場環境の改善が目的
■ 公益通報窓口
- 法令違反や不正行為の通報
- 社会的に問題のある行為の是正が目的
実務上は同じ窓口で運用するケースもありますが、
制度としては別のものとして整理しておくことが大切です。
改正で何が変わる?企業への影響は?
解雇などに刑事罰が導入され、企業の責任が大きく重くなり、2026年12月1日施行に向けた準備が必要です。
今回の改正公益通報者保護法は、2026年12月1日から施行される予定です。
まだ少し先のようにも感じますが、
体制整備や社内周知には時間がかかるため、早めに準備を始めておくことが大切です。
■ 解雇・懲戒に刑事罰
通報を理由とした解雇や懲戒に対して、刑事罰が設けられました。
■ 解雇の理由は企業が説明する必要あり
公益通報から1年以内(または会社が通報を知ってから1年以内)に行われた解雇や懲戒処分については、
「通報が理由ではない」と企業側が説明する必要があります。
また、コンプライアンス違反をおこっなた労働者を懲戒解雇したものの、
後の訴訟で当該労働者が解雇前1年以内に公益通報をしていた事実が初めて明らかになった場合でも、
企業が「通報を理由とした解雇でない」と反証できなければ解雇が無効となってしまうということが考えられます。
企業として押さえておきたいポイント
制度を作るだけでなく、記録・運用・周知まで含めて整えることが重要です。
実務上、特に重要なポイントは次の通りです。
① 証拠・記録を残す
処分を行う場合は、
- なぜその判断に至ったか
- どんな事実があったか
をしっかり残すことが重要です。
② 通報対応の関係者を明確にする
通報に関わる人(調査・報告・是正など)は適切に役割を整理しておく必要があります。
③ フリーランスも含めた窓口設計
従業員だけでなく、外部の人も使える仕組みになっているか確認が必要です。
④ 周知ができているか
制度は「知られていないと意味がない」ため、
- 社内周知
- 研修
- 資料配布
などが重要になります。
勘違いしやすいポイント
「通報されたらすぐ問題になる」と思われがちですが、実際には通報内容の信頼性や目的も考慮されます。
一方で、企業側の対応が不十分だと、そこが問題になるケースもあるため注意が必要です。
実務での進め方(チェックリスト)
段階的に「窓口・ルール・運用」を整えることで、無理なく対応できます。
- 通報窓口の設置(内部・外部含め検討)
- 対応フローの整理
- 関係者の役割定義
- 記録ルールの整備
- 社内外への周知
一度に完璧を目指すよりも、運用しながら改善していく視点が大切です。
よくある質問
Q. 中小企業でも対応は必要ですか?
常時使用する労働者が300人以下の中小企業では努力義務ですが、
通報があった場合に適切に対応することが必要です。
Q. ハラスメント窓口と一緒にしていいですか?
可能ですが、目的や対応フローが混ざらないよう整理が必要です。
まとめ
・公益通報は「会社の不正を知らせる仕組み」
・改正により企業の責任は大きくなっている
・2026年12月1日の施行に向けた準備が重要
・制度だけでなく運用・記録・周知が重要

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
公益通報者保護法は「通報者保護」だけでなく「企業のリスク管理」に直結するため、改正を踏まえた体制整備が重要です。
※制度内容は今後変更される可能性もあるため、最新情報の確認もあわせて行うことが大切です。
公式資料
はじめての公益通報者保護法(消費者庁)
公益通報者保護法知っていますか?(消費者庁)
内部通報制度を活用して信頼度 UP!~ 公益通報者保護法をご存じですか?~(消費者庁)
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当事務所では、「労使双方が制度を正しく理解し、日頃から話し合える職場づくりが、労使トラブルの予防につながる」と考えています。
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日頃からルールを整え、制度を正しく理解しておくことで、防げるトラブルは少なくありません。
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