
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、社会保険労務士の関谷です。
今回は、髭を理由に人事評価を下げたことが問題となった裁判例をもとに、会社の身だしなみルールについて考えます。
身だしなみルールは、会社の印象や安全管理のために必要な場面があります。
一方で、髭や髪型などは個人の自由にも関わるため、会社が一方的に制限できるとは限りません。
髭を理由に人事評価を下げることは問題になるのか?
髭を理由にした評価の引き下げは、必要性や運用方法によっては違法と判断される可能性があります。
大阪市の交通局職員に関する裁判例(大阪高判令元・9・6)では、地下鉄運転業務に従事していた職員が髭を生やしていたことについて、会社側が指導を行い、人事評価でも低く評価したことが問題になりました。
裁判所は、身だしなみルール自体については、乗客サービスの考え方として一定の必要性を認めました。
ただし、髭を剃るよう強く求めたり、人事評価で主な減点理由として扱った点については、違法と判断しました。
つまり、身だしなみルールがあるからといって、すぐに減点評価や不利益な扱いができるわけではありません。
身だしなみルールはなぜ慎重に考える必要があるのか?
髭や髪型は仕事中だけでなく私生活にも影響するため、会社のルールとして制限するには慎重な判断が必要です。
制服や名札のように、勤務中だけ着け外しできるものとは違い、髭や髪型は私生活にも影響します。
そのため、会社としては次のような視点が大切です。
- なぜその身だしなみを制限する必要があるのか
- その制限は業務内容に合っているのか
- 全社員に同じように運用できているのか
- 一部の人だけに厳しくなっていないか
特に、顧客対応がある職種、安全衛生上の理由がある職種などでは、一定のルールが必要になることもあります。
ただし、「なんとなく印象が悪いから」という理由だけでは、説明が難しい場合があります。
会社が確認したい3つのポイント
身だしなみルールは、必要性・内容の妥当性・公平な運用の3つを確認すると整理しやすくなります。
1. 業務上の必要性があるか
たとえば、食品を扱う仕事で衛生管理上の理由がある、安全具の着用に支障がある、といった場合は説明しやすくなります。
一方で、業務との関係が薄い場合は、制限の必要性を慎重に考える必要があります。
2. 制限の内容が行き過ぎていないか
「清潔感を保つ」「業務に支障が出ない範囲にする」といった内容と、全面的に禁止する内容では、負担の大きさが違います。
会社の目的に対して、そこまで制限する必要があるのかを確認しましょう。
3. 公平に運用できているか
同じような身だしなみでも、ある社員だけ注意され、別の社員は放置されていると、不公平感が生まれます。
身だしなみの感じ方は、世代や性別、個人の価値観によっても差が出やすい部分です。
担当者の感覚だけで判断しない仕組みが大切です。
勘違いしやすいポイント
身だしなみルールがあるだけで、すぐに懲戒・減点・退職勧奨ができるわけではありません。
よくある誤解は、「就業規則や服務規律に書いてあるのだから、従わなければ評価を下げてもよい」という考え方です。
もちろん、会社には職場秩序を保つためのルールを作る必要があります。
ただし、そのルールが合理的か、指導の仕方が適切か、人事評価に反映するほどの事情かは、別に考える必要があります。
特に、人事評価は現場判断で行われることも多いため、知らないうちに「好み」や「印象」で評価してしまうことがあります。
実務ではどう進めればよいか?
身だしなみを指導する前に、目的・対象・基準・運用方法を整理しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
会社としては、次の順番で確認すると整理しやすいです。
- どの業務で、なぜ身だしなみルールが必要なのかを整理する
- 禁止ではなく、必要な範囲のルールになっているか確認する
- ルールの対象者を明確にする
- 指導する人によって判断が変わらないようにする
- 人事評価に反映する場合は、業務への影響を具体的に確認する
会社として気をつけたいポイント
身だしなみの問題は、感情的なやり取りになりやすいテーマです。
最初から強い言い方をするのではなく、会社としての目的を説明し、本人の事情も確認したうえで進めることが大切です。
よくある質問
Q. 接客業なら髭は禁止できますか?
接客業だから必ず禁止できる、とは限りません。
顧客対応上どのような支障があるのか、清潔感の基準としてどこまで必要なのかを整理する必要があります。
Q. 就業規則に書けば問題ありませんか?
就業規則に書くことは大切ですが、それだけで十分とは限りません。
内容が合理的か、運用が公平かも確認が必要です。
Q. 人事評価で考慮するのも問題ですか?
状況によります。
身だしなみが実際に業務へ影響しているのか、評価項目との関係が説明できるのかを確認する必要があります。
まとめ
髭や髪型などの身だしなみは、会社の印象や職場秩序に関わる一方で、個人の自由や私生活にも関わります。
そのため、会社としては、
- なぜ制限が必要なのか
- どこまで制限するのか
- 誰に、どのように運用するのか
- 人事評価に反映するほどの事情があるのか
を整理しておくことが大切です。
裁判例や実務上の考え方は、今後の判断にも影響することがあります。
実際にルールを作る・変更する場合は、最新の情報や個別事情も確認しながら進めると安心です。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
身だしなみルールは作ること自体が問題なのではなく、必要性・内容・運用のバランスを確認することが大切です。
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