再雇用で給与を下げてもいい?不満が生まれる理由と会社が見直すべき考え方

こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、社会保険労務士の関谷です。

最近、「再雇用後の給与ってどこまで下げていいのか」というご相談をいただくことが増えています。

この記事では、なぜ「再雇用=賃金ダウン」という考え方が広まったのか、

その前提が今どう変わっているのかを整理します。

あわせて、これからの高齢者雇用を考えるうえで、会社としてどの視点が必要かをお伝えします。

目次

なぜ再雇用で賃金を下げるのが一般的だったのか?

賃金を下げても年金や給付で補える仕組みがあったため、会社と本人の双方にとって受け入れられてきました。

これまで多くの会社では、定年後の再雇用を機に賃金を大きく引き下げる運用が行われてきました。

これは単なるコスト削減ではなく、当時の制度とセットで成り立っていた仕組みです。

ポイントは次の3つです。

  • 在職中は年金が減額される仕組み(在職老齢年金)
  • 雇用保険から賃金の一部を補う給付(高年齢雇用継続給付)
  • 年金が60歳から受け取れる

つまり、

「給与は下がるが、全体の収入はある程度維持される」

というバランスが取れていました。

そのため、会社としても人件費を抑えつつ、本人も一定の納得感を持てる形になっていたのです。

その前提は今も通用するのか?

年金の支給タイミングと制度の見直しにより、従来の「賃金を下げて調整する前提」は崩れつつあります。

現在は状況が大きく変わっています。

まず大きな変化として、年金の支給開始年齢の引上げがあります。

これにより、

  • 60歳時点では年金が受け取れない
  • 定年後すぐの収入を年金で補えない

という状況になりました。

そのため、これまでのように

「賃金が下がっても年金で補える」という前提は成り立ちにくくなっています。

さらに、在職老齢年金の仕組みも見直されています。

従来は、

  • 一定以上の賃金を得ると年金が減額される
  • そのため賃金を抑える合理性があった

という構造でした。

しかし現在は、在職老齢年金の支給停止調整額が引き上げられ、年金が減額される基準が65万円となり、賃金が高くても年金が減額されにくい仕組みに変わっています。

これにより、

  • 無理に賃金を下げて調整する必要性は相対的に低下
  • むしろ賃金を下げることによる不利益の方が目立ちやすい

という状況になっています。

こうした制度の変化が重なった結果、

定年前と比べて総収入が大きく減るケースも増え、

従来のような「制度で補われる前提」は崩れてきています。

勘違いしやすいポイント

「賃金を下げないと年金が減るから仕方ない」という認識のまま運用してしまう点です。

制度の変更により、その前提自体が変わってきているため、

過去と同じ考え方で設計するとズレが生じやすくなります。

なぜ高齢者雇用で不満やトラブルが起きるのか?

会社の期待と待遇のバランスに加え、仕事内容と賃金の不一致が、不満やトラブルの原因になります。

現場でよく起きるのが次のようなズレです。

会社 → 人手不足なので戦力として働いてほしい

本人 → 業務内容はさほど変わらないのに待遇は大幅に下がる

この状態では、

  • モチベーションが上がらない
  • 役割が曖昧になる
  • 不満が蓄積する

といった問題が起きやすくなります。

さらに近年は、もう一つ見逃せないポイントがあります。

それが、仕事内容と賃金のバランスです。

例えば、

  • 定年前とほぼ同じ仕事をしている
  • 責任の重さもあまり変わっていない

にもかかわらず、賃金だけが大きく下がっている場合、

本人の納得感が得られにくくなります。

加えて、こうしたケースでは

「同一労働同一賃金(不合理な待遇差を設けない考え方)」の観点からも、問題が生じる可能性があります。

そのため、

  • 「再雇用だから」という理由だけで一律に賃金を下げる
  • 仕事内容とのバランスを検討しない

といった運用は、トラブルにつながりやすくなっています。

よくある誤解

「再雇用だから待遇が下がるのは当然」という考え方は、トラブルにつながりやすい傾向があります。

もちろん一定の調整はあり得ますが、

仕事内容や役割とのバランスが取れていない場合は、問題になりやすくなります。

高齢者の働き方は「会社全体の問題」として考える

高齢者の働き方は個別対応ではなく、会社全体の経営課題として設計する必要があります。

重要なのは、高齢者の働き方を「高齢者だけの問題」として切り離さないことです。

背景には次のような課題があります。

  • 人手不足
  • 技術継承
  • 世代交代
  • 人件費のバランス

これらはすべて、会社全体の問題です。

つまり、高齢者の働き方は 「どのように力を発揮してもらうか」だけでなく、

「会社の中でどう位置付けるか」から考える必要があります。

これからの高齢者雇用で会社が考えたいポイント

自社の状況に応じて、待遇・役割・制度のバランスを設計することが重要です。

これからの高齢者雇用では、一律の正解はありません。

会社ごとに、次のような点を整理することが重要です。

① どこまで戦力として期待するか

  • フル戦力として働いてもらうのか
  • サポート役なのか

 ⇒ 期待値によって待遇設計が変わります

② 人件費とのバランス

  • コストを優先するのか
  • 人手不足対応を優先するのか

 ⇒ 経営判断が必要な部分です

③ 法的な視点

  • 同一労働同一賃金(不合理な待遇差を設けない考え方)
  • 高年齢者雇用安定法(高齢者の雇用確保を求める法律)

 ⇒ 制度との整合性も無視できません

会社として気をつけたいポイント

「役割はそのままなのに賃金だけ大きく下がる」状態は、後々トラブルにつながる可能性があります。

役割・責任・待遇のバランスをセットで考えることが大切です。

まとめ

・再雇用で賃金を下げる慣行は、もともと制度とセットで成り立っていた

・現在はその前提が変わり、収入減が大きくなりやすい

・待遇と期待のズレや、仕事内容と賃金の不一致が不満の原因になる

・高齢者雇用は会社全体の経営課題として考える必要がある

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント

高齢者を戦力として活用するなら、過去の慣行に頼らず、
役割と待遇のバランスを会社ごとに設計することが重要です。

おわりに

高齢者雇用は、「賃金をどこまで下げるか」だけでなく、役割・期待・制度とのバランスをどう取るかが重要なテーマです。

特に現在は、年金制度や働き方の変化により、これまでの運用がそのまま通用しにくくなっています。

そのため、

  • 今の再雇用の条件で問題がないか
  • 仕事内容と賃金のバランスが取れているか
  • 将来的にトラブルになりにくい設計になっているか

といった点を、一度整理しておくことが大切です。

「再雇用だからこのくらいでいいだろう」と設計した内容が、後から見直しづらくなるケースも少なくありません。

「自社の運用が今の制度に合っているのか確認したい」

「見直すとしたら、どこから考えればいいのか整理したい」

といった場合は、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

「おっきなでんしゃ社会保険労務士事務所」代表の関谷と申します。豊かな自然とあたたかい人々に恵まれたこの新潟の地で、家族とともに日々の暮らしを楽しみながら、社会保険労務士として地域の企業様中心にをサポートさせていただいております。

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