
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、社会保険労務士の関谷です。
社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。
職員面談を実施していても、「何を聞けばよいか分からない」「困っていることはないと言われて終わってしまう」ということはありませんか?
この記事では、クリニックの院長先生や事務長の方に向けて、職員が仕事上の悩みを話しやすくなる質問例と、面談を職場改善につなげる方法を解説します。
職員面談をしているのに、なぜ悩みが見えてこないのでしょうか?
職員が悩みを話さない背景には、質問の仕方だけでなく、普段の関係性や面談の目的が関係していることがあります。
「最近、仕事で困っていることはありませんか?」
院長先生がこう尋ねても、職員からは「特にありません」という回答しか返ってこない。
このような経験はないでしょうか。
もちろん、本当に困っていることがない場合もあります。
一方で、職員が何らかの悩みを抱えていても、それをうまく言葉にできなかったり、話すことをためらったりする場合も考えられます。
例えば、次のような気持ちです。
・忙しそうな院長先生に相談するほどのことではない
・仕事ができないと思われたくない
・他の職員との関係が悪くなるのが心配
・相談しても状況は変わらないかもしれない
特に、少人数で働くクリニックでは、職員同士が毎日顔を合わせることも多く、人間関係への配慮から悩みを伝えにくい場合があります。
ここで大切なのは、「悩みがないと言っているから問題はない」と決めつけないことです。
ただし、悩みを無理に聞き出すことが目的ではありません。
まずは、職員が必要なときに安心して相談できる関係をつくることが大切です。
職員面談では、何を聞けばよいのでしょうか?
漠然と悩みを尋ねるよりも、実際の業務や働き方について具体的に質問すると、職員も答えやすくなります。
職員面談では、質問の内容を少し工夫するだけで、話し合いのきっかけをつくることができます。
私がおすすめしたいのは、次の5つの質問です。
① 最近、仕事で負担に感じていることはありますか?
例えば、
「最近、忙しいと感じる時間帯はありますか?」
「一人では対応が難しいと感じる業務はありますか?」
といった聞き方です。
クリニックでは、受付、会計、電話対応、診療補助など、複数の業務を並行して行うことがあります。
そのため、単純に「困っていることは?」と尋ねるよりも、具体的な業務に目を向けることで、負担を感じている場面が見えてくることがあります。
② 仕事を進めるうえで、改善できそうなことはありますか?
例えば、
「最近、手間がかかっていると感じる作業はありますか?」
「もっと効率よくできそうな仕事はありますか?」
といった質問です。
院長先生や事務長が把握していない小さな不便が、現場に存在していることもあります。
職員の意見を聞くことで、業務分担や仕事の進め方を見直すきっかけになるかもしれません。
③ 周囲との連携で、困っていることはありますか?
例えば、
「他の職員との引き継ぎで困ることはありますか?」
「必要な情報が伝わりにくい場面はありますか?」
といった聞き方です。
医療現場では、職員同士の連携が日々の診療を支えています。
ただし、人間関係の問題を尋ねる際には注意が必要です。
特定の職員に対する不満を無理に聞き出すのではなく、まずは仕事上の連携に改善できる点がないかを確認するとよいでしょう。
④ 今後、身につけたい仕事や挑戦してみたいことはありますか?
職員面談は、悩みを確認するだけの場ではありません。
例えば、
「今後、できるようになりたい業務はありますか?」
「仕事で学んでみたいことはありますか?」
と尋ねることで、職員の成長や今後の働き方について話し合うことができます。
希望する業務と現在の担当業務との間に違いがあれば、教育や業務分担を検討する材料にもなります。
⑤ 医院として、何か支援できることはありますか?
最後に確認したい質問です。
職員が悩みを話してくれたとしても、それだけで問題が解決するとは限りません。
「どうすれば仕事を進めやすくなると思いますか?」
「医院として手伝えることはありますか?」
と尋ねることで、具体的な改善に向けた話し合いにつなげることができます。
ただし、すべての要望に応える必要があるわけではありません。
対応できることと難しいことを整理し、必要に応じて理由を説明することが大切です。
職員が話しやすくなるために、どんな工夫が必要でしょうか?
職員の本音を理解するためには、質問の内容だけでなく、話を遮らずに聞く姿勢や、面談への安心感が重要です。
最初から否定しない
職員から改善の提案を受けたとき、
「それは難しい」
「今までこの方法でやってきたから」
と、すぐに返答してしまうことはないでしょうか。
もちろん、職員の提案がすべて実現できるわけではありません。
しかし、話を最後まで聞く前に否定してしまうと、職員は次から意見を伝えにくくなるかもしれません。
まずは、
「そう感じていたのですね」
「具体的には、どのような場面でしょうか?」
と、相手の考えを理解する姿勢を示すことが大切です。
面談の目的を事前に伝える
職員にとって、院長先生から突然「面談をします」と言われると、何か注意されるのではないかと心配になる場合があります。
そのため、面談の目的を事前に伝えることをおすすめします。
例えば、
「普段の仕事で困っていることや、改善できそうなことを聞いて、働きやすい職場づくりに役立てたいと考えています」
と説明する方法です。
人事評価や指導を目的とする面談とは区別し、何について話す時間なのかを明確にするとよいでしょう。
話してくれたことへの対応を大切にする
面談で出た意見に対応できた場合には、その結果を本人に伝えましょう。
一方、すぐに対応できない場合にも、検討状況を説明することが大切です。
「相談しても何も変わらない」と感じる状態を避けるためには、面談後の対応が欠かせません。
この記事の最後で紹介している厚生労働省の「こころの耳」でも、管理監督者が日頃から部下の様子に気を配り、相談に対応することの重要性が紹介されています。興味のある方はご覧ください。
クリニックでは、職員面談をどのように進めればよいのでしょうか?
面談は長時間行うことよりも、目的を決めて継続し、確認した課題に対応することが大切です。
診療を行いながら、職員一人ひとりと面談する時間を確保するのは、簡単ではないかもしれません。
そこで、まずは短時間の面談から始める方法も考えられます。
例えば、15〜20分程度を目安に、次のように進めます。
| 時間の目安 | 面談の内容 |
|---|---|
| 最初の3分 | 最近の仕事の状況を確認する |
| 次の7分 | 困っていることや改善したいことを聞く |
| 次の5分 | 今後挑戦したいことや必要な支援を確認する |
| 最後の5分 | 対応することや次回の確認事項を整理する |
これは法律で決められた時間配分ではなく、面談を始めるための一例です。
職員の人数や勤務体制に合わせて調整して構いません。
なお、業務として面談を実施する場合、その時間は原則として労働時間に該当します。勤務時間外に設定する場合は、労働時間の把握や賃金の取扱いにも注意しましょう。
また、面談の最後には、次のことを簡単に記録しておくとよいでしょう。
・話し合った主な内容
・医院として対応を検討すること
・誰が対応するか
・いつまでに確認するか
ただし、面談記録には個人情報や他の職員に関する内容が含まれる場合があります。
記録する内容を必要な範囲に絞り、閲覧できる人も適切に限定しましょう。
職員面談で気をつけたいことはありますか?
面談は日常的な職場改善に役立ちますが、評価やハラスメントの相談など、目的に応じた適切な対応が必要です。
よくある誤解|定期面談をすれば職員の悩みはすべて把握できる?
定期的に面談を行っていれば、職員の悩みをすべて把握できるというわけではありません。
面談では話しにくい内容もありますし、院長先生自身に関する悩みを直接伝えにくい場合も考えられます。
そのため、面談とは別に相談できる相手や方法を用意しておくことも重要です。
特に、ハラスメントに関する相談については、事業主に相談体制の整備など、法令に基づく対応が求められています。
職員面談を実施していることだけで、必要なハラスメント防止措置をすべて講じたことにはなりません。
また、ハラスメントの申出があった場合には、通常の職員面談とは区別し、プライバシーに配慮しながら、必要な事実確認や対応を進めることが大切です。
面談で話した内容を人事評価に直結させない
職員が安心して悩みを話せるようにするには、面談の目的を明確にしておく必要があります。
職員の育成や職場改善のための面談で話した悩みが、そのままマイナス評価につながるようでは、相談しづらくなる可能性があります。
人事評価を目的とする面談と、日頃の悩みや希望を聞く面談は、必要に応じて分けて考えることをおすすめします。
プライベートな事情を無理に聞き出さない
職員の働き方を考えるうえで、家庭の事情などが関係する場合もあります。
しかし、必要以上に私生活へ踏み込むことは避けましょう。
職員本人が話したくない内容について、無理に説明を求める必要はありません。
一方で、体調や安全に関わる相談を受けた場合は、本人の意向やプライバシーに配慮しつつ、職場として必要な対応を検討することが大切です。
職員面談について、よくある質問
面談の頻度や担当者は医院の規模や体制に合わせて決め、継続できる仕組みを考えましょう。
Q1. 職員面談は毎月行う必要がありますか?
職員との1on1面談について、すべてのクリニックに毎月の実施を義務づける法律上の決まりはありません。
まずは数か月に1回など、継続できる頻度から始める方法もあります。
ただし、職員から相談があった場合は、次の定期面談まで待たずに対応することが重要です。
Q2. 院長がすべての職員と面談する必要がありますか?
必ずしも院長先生が全員と面談する必要はありません。
事務長や看護師長など、業務内容や職員の状況を把握している方が担当する方法も考えられます。
ただし、相談内容によっては、直属の上司以外に相談できる体制も必要です。
Q3. 職員から改善の要望が出た場合、必ず対応しなければなりませんか?
すべての要望をそのまま実現する必要はありません。
例えば、勤務時間の変更や人員の増員など、すぐには対応できない内容もあります。
大切なのは、話を聞いたうえで、対応の必要性や実現可能性を検討することです。
なお、法令違反や安全配慮に関する問題などが明らかになった場合には、単なる希望として扱わず、必要な是正や対応を検討する必要があります。
まとめ
職員面談は悩みを聞き出すことが目的ではなく、働きやすい職場づくりにつなげるためのコミュニケーションの機会です。
職員面談で大切なのは、特別な質問技術を身につけることだけではありません。
まずは、職員が普段の仕事について安心して話せる環境をつくることです。
そして、話してくれた内容を受け止め、必要な改善につなげていくことが重要です。
職員とのコミュニケーションを日頃から大切にすることは、職場の問題を早い段階で把握し、働きやすい環境を整えることにつながります。
職員が安心して働ける環境は、院長先生が診療に集中するための大切な土台でもあります。
まずは、次の職員面談で「最近、仕事で負担に感じていることはありますか?」と、具体的な質問を一つ加えてみてはいかがでしょうか。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
職員面談では、業務に関する具体的な質問と丁寧な傾聴を心がけ、面談後の対応まで行うことが、クリニックの働きやすい職場づくりにつながります。
参考資料
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳(厚生労働省)
ご相談・お問い合わせについて
当事務所が大切にしている労務管理の考え方
当事務所では、「労使双方が制度を正しく理解し、日頃から話し合える職場づくりが、労使トラブルの予防につながる」と考えています。
労使トラブルは、問題が起きてから対応するよりも、未然に防ぐことが大切です。
トラブルの多くは、制度を知らなかったことや、事前の認識の違いから生じます。
日頃からルールを整え、制度を正しく理解しておくことで、防げるトラブルは少なくありません。
社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。
そのため、就業規則の作成・変更や労働・社会保険の各種手続きだけでなく、日々の労務相談を通じた「予防型」の労務管理にも力を入れています。
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