
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、
社会保険労務士の関谷です。
社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。
短時間労働者への社会保険の適用拡大にあわせて、一定の方の社会保険料の本人負担を軽減する「保険料調整制度」が設けられます。
この記事では、日本年金機構の「保険料調整制度のご案内」をもとに、どのような会社・従業員が対象になるのか、保険料負担がどのように変わるのか、会社にはどのような手続きが必要なのかをわかりやすく整理します。
※この記事は「令和8年の法改正スケジュール一覧」で紹介した「短時間労働者の被用者保険加入支援措置」の詳細記事です。令和8年の法改正全体を確認したい方は、親記事もあわせてご覧ください。
令和8年の法改正スケジュール一覧|人事・労務担当者がまず把握しておきたい全体像
保険料調整制度とはどのような制度?
保険料調整制度は、社会保険の適用拡大などで対象となる短時間労働者について、健康保険・厚生年金保険の本人負担を通算3年間軽減できる制度です。
パート・アルバイトなどの短時間労働者について、健康保険・厚生年金保険への加入対象が段階的に広がっています。
社会保険に加入すると、健康保険や厚生年金による保障を受けられる一方で、給与から本人負担分の社会保険料が差し引かれるようになります。
そこで、社会保険に新たに加入することによる負担を和らげるために設けられたのが「保険料調整制度」です。
対象となる事業所がこの制度を利用すると、対象となる短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の本人負担を通算3年間軽減できます。
仕組みを簡単に整理すると、通常は会社と従業員がおおむね半分ずつ保険料を負担するところ、
という流れです。
つまり、社会保険料そのものを安くするというより、「会社と従業員のどちらがどのくらい負担するか」を一時的に調整する仕組みと考えるとわかりやすいでしょう。
なぜ短時間労働者の保険料負担を軽減するの?
社会保険への加入によって手取りが急に減る影響を和らげ、短時間労働者が働き方を調整することを抑えるための経過的な仕組みです。
社会保険の適用範囲は、今後さらに広がっていきます。
これまで社会保険に加入していなかった短時間労働者が、新たに加入するケースも増えていくことになります。
社会保険への加入には、将来受け取る厚生年金が増えることや、健康保険の給付が受けられることなどのメリットがあります。
一方、働く方から見ると、
「今までなかった社会保険料が給与から引かれるようになる」
という変化でもあります。
その結果、手取りを維持するために勤務時間を減らすなど、働き方を調整する方が出てくることも考えられます。
そこで、社会保険に加入した直後の本人負担を一定期間軽減し、負担の変化を緩やかにする仕組みが設けられました。
どのような会社が保険料調整制度の対象になる?
2026年(令和8年)10月からすべての会社が一斉に対象になるわけではなく、任意特定適用事業所や、その後の社会保険適用拡大の対象となる事業所が段階的に対象となります。
ここは今回の制度で特に注意したいところです。
「2026(令和8)年10月から保険料調整制度が始まる」という情報だけを見ると、すべての会社が2026(令和8)年10月から対象になるように感じるかもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。
2026(令和8)年10月1日以降
2026(令和8年)年10月1日以降に「任意特定適用事業所」になると、保険料調整制度の対象となります。
任意特定適用事業所とは、簡単にいうと、本来は企業規模の要件によって短時間労働者への社会保険適用が義務ではない会社が、労使の合意により短時間労働者を社会保険の加入対象とする仕組みです。
なお、2026(令和8)年9月30日以前にすでに任意特定適用事業所となっている場合は、今回の保険料調整制度の対象外です。
2027(令和9)年10月1日以降
2027(令和9)年10月からは、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大がさらに進みます。
原則として、この適用拡大によって短時間労働者が新たに加入対象となる事業所が、保険料調整制度の対象となっていきます。
企業規模については、次のように段階的に対象が広がる予定です。
2027(令和9)年10月~
厚生年金保険の被保険者数36人以上の企業等
2029(令和11)年10月~
厚生年金保険の被保険者数21人以上の企業等
2032(令和14)年10月~
厚生年金保険の被保険者数11人以上の企業等
2035(令和17)年10月~
厚生年金保険の被保険者数10人以下の企業等
そのため、自社に関係するか確認するときは、
「2026年10月から始まる制度だから対象」
と考えるのではなく、
「自社はいつ社会保険の適用拡大の対象になるのか」
から確認することが大切です。
どのような短時間労働者が対象になる?
対象となるのは、短時間労働者として健康保険・厚生年金保険に加入し、標準報酬月額が12万6,000円以下の方です。
会社が制度の対象になったからといって、そこで働くすべての従業員の保険料が軽減されるわけではありません。
日本年金機構では、対象となる被保険者について、次の2つをどちらも満たす方としています。
ここで出てくる「標準報酬月額」とは、健康保険料や厚生年金保険料を計算するときの基準となる金額です。
実際に受け取った給与額そのものではなく、給与などを一定の幅で区分した「等級」に当てはめて決まります。
そのため、
「給与が12万6,000円以下なら必ず対象」
という意味ではありません。
対象になるかどうかは、実際に決定された標準報酬月額などをもとに確認する必要があります。
保険料の本人負担は3年間でどう変わる?
本人負担は一律に同じ割合で軽減されるのではなく、標準報酬月額によって異なり、3年目には軽減幅が半分になります。
通常、健康保険料・厚生年金保険料は会社と従業員が折半して負担するのが基本です。
つまり、通常の負担割合をイメージすると、
本人:50%
会社:50%
です。
保険料調整制度を利用すると、この割合が一時的に変更されます。
日本年金機構が示している負担割合は次のとおりです。

出典:日本年金機構「保険料調整制度のご案内」
ポイントは、給与水準が低い方ほど、本人負担を大きく軽減する設計になっていることです。
また、3年間ずっと同じ割合で軽減されるわけでもありません。
1~2年目は本人負担を大きく軽減し、3年目には軽減割合を半分にします。
その後、通常の労使折半へ戻っていくイメージです。
標準報酬月額88,000円の場合はどうなる?
日本年金機構では、標準報酬月額88,000円の場合について、わかりやすいイメージを示しています。
仮に本来の社会保険料が、
本人 12,500円
会社 12,500円
だったとします。
通常であれば50:50です。
ところが保険料調整制度を利用すると、1~2年目の本人と会社の負担割合は25:75となります。
そのため、
本人 6,250円
会社 18,750円
というイメージになります。
本人から見ると、本来12,500円だった負担が6,250円に軽減されます。
一方で会社は、本来の12,500円に6,250円を加えて、一時的に18,750円を負担することになります。


出典:日本年金機構「保険料調整制度のご案内」
会社が多く負担した保険料はどうなる?
会社はいったん本人の軽減分を追加負担しますが、後から調整されるため、最終的に会社が納付する保険料がその分増える仕組みではありません。
ここは、会社にとって特に気になるポイントではないでしょうか。
先ほどの例では、本来12,500円だった会社負担が、一時的に18,750円になりました。
これだけを見ると、
「従業員の手取りを減らさないために、会社が6,250円多く負担する制度なの?」
と思うかもしれません。
しかし、この追加負担分がそのまま会社のコストになるわけではありません。
日本年金機構では、事業主が本人の軽減分を一時的に負担した後、一定期間経過後に追加負担分を調整するため、最終的に事業主が納付する保険料は増えないと説明しています。
イメージとしては、
という流れです。
将来の年金額は減らない
もう一つ重要なのが、将来の年金への影響です。
「本人が支払う厚生年金保険料が少なくなるなら、将来もらえる年金も少なくなるのでは?」
と思う方もいるでしょう。
しかし、日本年金機構では、この制度を利用しても、被保険者が将来受け取る年金額には影響しないと案内しています。
本人の保険料負担を軽減する制度ではありますが、厚生年金そのものの加入記録を減らす仕組みではないということです。
従業員へ説明するときにも、この点は伝えておきたいところです。
保険料調整制度を利用するには手続きが必要?
制度は自動的に適用されるものではなく、対象となった日から2年以内に事業主が申し出る必要があります。
「対象になれば、自動的に従業員の保険料が軽くなる」
という制度ではありません。
保険料調整制度を利用するためには、事業主からの申し出が必要です。
日本年金機構の案内では、
「事業所が保険料調整制度の対象となった日から2年以内」
に申し出る必要があるとされています。
つまり、
という対応が必要になります。
なお、届書の様式や具体的な手続きについては、厚生労働省から詳細が示され次第、日本年金機構のホームページに掲載される予定です。
制度開始前後には最新情報を確認しておきましょう。
会社として今から何を確認しておけばいい?
まずは自社がいつ対象になるのかを確認し、短時間労働者の働き方・標準報酬月額・社内での説明方法を順番に整理しておくことが大切です。
制度の内容だけを見ると複雑に感じますが、会社として確認する順番を決めておくと整理しやすくなります。
まずは、次のような流れで確認してみましょう。
特に大切なのは、単に「社会保険に加入すること」だけを従業員へ伝えないことです。
従業員からすると、
「なぜ加入するのか」
「給与からいくら引かれるのか」
「保険料調整制度を使うとどうなるのか」
「3年後にはどうなるのか」
といった点が気になるでしょう。
会社側が制度を整理して説明することで、従業員との認識のずれを減らすことにつながります。
会社として気をつけたいポイント
特に注意したいのが、「3年間」の考え方です。
日本年金機構では、事業所が制度の利用を開始してから3年が経過した時点で、対象となる被保険者の保険料軽減は終了するとしています。
そのため、「従業員一人ひとりが加入した日から必ず3年間軽減される」と考えないよう注意が必要です。
途中から対象になった従業員がいる場合などは、実際にどの期間について軽減を受けられるのかを確認する必要があります。
よくある誤解・勘違いしやすいポイント
「すべてのパートの保険料が3年間安くなる制度」ではなく、対象となる事業所・短時間労働者・利用期間などに条件があります。
今回の制度では、いくつか勘違いしやすいポイントがあります。
まず、
「2026年10月から、すべての会社のパート・アルバイトが対象になる」
わけではありません。
2026年10月から対象となれるのは、同年10月1日以降に任意特定適用事業所となる事業所です。
その後、2027年10月以降、社会保険の適用拡大にあわせて対象となる事業所が段階的に広がっていきます。
また、
「社会保険に加入しているパートなら全員対象」
でもありません。
短時間労働者として加入し、標準報酬月額が12万6,000円以下であることなどの条件があります。
さらに、
「本人負担を軽くした分は会社が3年間負担し続ける」
という仕組みでもありません。
会社はいったん本人の軽減分を追加で負担しますが、一定期間経過後にその追加負担分が調整されます。
制度名だけで判断せず、
「自社は対象事業所か」
「対象となる従業員は誰か」
「いつからいつまで利用できるのか」
を順番に確認することが大切です。
よくある質問
制度の対象や会社負担、3年間の考え方など、実際に運用するときに疑問になりやすいポイントを整理します。
Q1.制度の対象となるのは社会保険に加入するパート・アルバイトは全員ですか?
いいえ。
対象となる事業所で、短時間労働者として健康保険・厚生年金保険に加入し、標準報酬月額が12万6,000円以下であることなどの条件があります。
社会保険に加入しているパート・アルバイト全員の本人負担を軽減する制度ではありません。
Q2.会社の社会保険料負担が増えるのですか?
会社はいったん従業員の軽減分を追加で負担します。
ただし、その追加負担分は一定期間経過後に調整されるため、最終的に会社が納付する保険料がその分増える仕組みではありません。
Q3.本人負担は3年間ずっと同じ金額ですか?
同じとは限りません。
本人の負担軽減割合は標準報酬月額によって異なり、制度利用3年目には軽減割合が半分になります。
たとえば標準報酬月額88,000円以下の場合、1~2年目の負担割合は本人25:会社75ですが、3年目は本人37.5:会社62.5となります。
Q4.制度は自動的に適用されますか?
いいえ。
制度を利用するためには、事業所が対象となった日から2年以内に事業主から申し出る必要があります。
具体的な届書や手続きについては、今後公表される最新情報を確認する必要があります。
まとめ
保険料調整制度は、社会保険の適用拡大に伴う短時間労働者の本人負担を段階的に軽減する制度で、会社は対象者だけでなく利用時期や手続きまで確認することが重要です。
保険料調整制度は、短時間労働者が健康保険・厚生年金保険に加入した際の本人負担を軽減するための仕組みです。
対象となる方については、標準報酬月額に応じて本人の負担割合が軽減され、3年目には軽減幅が半分になります。
また、本人負担を軽減した分は会社がいったん追加で負担しますが、その追加負担分は後から調整されるため、最終的に会社が納付する保険料がその分増える仕組みではありません。
一方で、
・すべての会社が2026年10月から対象になるわけではない
・すべてのパート・アルバイトが対象になるわけではない
・自動的に制度が適用されるわけではない
という点には注意が必要です。
会社としては、まず「自社がいつ対象になるのか」を確認し、そのうえで対象となる短時間労働者を把握していくと整理しやすいでしょう。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
保険料調整制度を正しく利用するためには、「自社がいつ対象になるか」「どの従業員が対象か」「本人負担がどう変わるか」「どのような手続きが必要か」の4点を順番に確認することが大切です。
※本記事は、日本年金機構が2026年4月1日時点で公表している情報をもとに作成しています。届書様式など今後公表予定の内容もあるため、実際に手続きを行う際は最新情報をご確認ください。
参考資料
制度の最新情報や保険料の負担割合については、以下の日本年金機構の案内をご確認ください。
保険料調整制度のご案内(日本年金機構)
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