
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、社会保険労務士の関谷です。
社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。
男性の育児休業は以前より身近な制度になっていますが、会社としては「申し出があったら何をすればいいの?」「うちには育休の制度がないけれど大丈夫?」と迷うこともあると思います。
この記事では、厚生労働省の令和7年度「父親の仕事と育児 両立読本」を参考に、細かな制度説明ではなく、会社として特に押さえておきたいポイントを中心にご紹介します。
男性の育児休業について、まず何を知っておけばいい?
男性も育児休業を取得できることを前提に、会社側も「申し出があってから考える」のではなく基本的な仕組みを確認しておくことが大切です。
「育児休業」というと、以前は女性が取得するものというイメージを持っていた方もいるかもしれません。
しかし、育児休業は男性も対象となる制度です。
厚生労働省の資料によると、令和6年度の男性の育児休業取得率は40.5%となっており、男性が育休を取得するケースは以前より増えています。
また、通常の育児休業とは別に、子どもが生まれた直後の時期に利用できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」という仕組みもあります。
会社として大切なのは、制度の細かな数字をすべて覚えることではありません。
まずは、
- 男性も育児休業の対象になる
- 通常の育児休業とは別に産後パパ育休もある
- 分割して取得できる仕組みもある
といった全体像を把握しておくとよいでしょう。
実際に従業員から申し出があったときには、その方の雇用状況や希望する取得期間などを確認しながら、具体的な対応を検討していくことになります。
「うちの会社には育休制度がない」は理由になる?
就業規則に育児休業の記載がないことだけを理由に「取得できない」と判断せず、法律上の対象になるかを確認する必要があります。
ここは特に勘違いしやすいポイントです。
よくある誤解:「就業規則に書いていなければ育休は取れない」
厚生労働省の資料にも記載されていますが育休は、会社に制度がなくても、一定の要件を満たせば育児休業を取得できることが説明されています。
つまり、
「うちは小さい会社だから育休制度はありません」
「今まで男性が育休を取ったことがないから対応できません」
というだけで判断するものではありません。
会社独自の福利厚生として設ける休暇とは違い、育児休業は法律に基づく制度だからです。
そのため、これまで育児休業の取得者がいなかった会社ほど、一度自社の就業規則や育児・介護休業規程を確認しておくことをおすすめします。
男性育休に備えて会社は何をしておけばいい?
育休は申し出を受け付けるだけではなく、従業員が制度を利用しやすい職場環境をあらかじめ整えておくことも会社に求められています。
男性育休への会社の対応というと、
「申請書を受け取ればいい」
と思われるかもしれません。
しかし、会社には育児休業を取得しやすくするための雇用環境を整えることも求められています。
例えば、厚生労働省の資料では、次のような取組が示されています。
- 育児休業・産後パパ育休についての研修
- 育児休業について相談できる窓口の整備
- 自社で育休を取得した事例の収集・提供
- 育児休業を取得しやすくする会社の方針の周知
すべての会社が大掛かりな制度をつくらなければならない、というイメージを持つ必要はありません。
大切なのは、従業員から相談されたときに、
「誰に相談すればいいのか分からない」
「上司によって対応が違う」
という状態にしないことです。
まずは社内の相談先を決める、管理職にも基本的な制度を共有するといったところから確認してみるとよいでしょう。
育休の申し出があったとき、会社はどう対応する?
本人や配偶者の妊娠・出産の申し出を受けた場合は、会社側から育休制度などを個別に案内し、取得について本人の意向を確認することが重要です。
「育休を取りたい人から相談があれば説明すればよい」と考えている会社もあるかもしれません。
実際には、本人または配偶者の妊娠・出産について従業員から申し出があった場合、会社には育児休業制度などについて個別に周知し、取得する意向があるかを確認する対応が求められています。
ここで大切なのは、単に書類を渡すことではありません。
「こういう制度があります」
「申し出はこちらです」
と必要な情報を伝えたうえで、本人がどうしたいのか確認していくことが基本になります。
取得を勧めることと、取得を強制することは違います
会社が行う「意向確認」は、
「当然取るよね?」
と取得を強制するものではありません。
反対に、
「繁忙期だから取らないよね?」
など、取得を控えさせる方向へ誘導するものでもありません。
制度について必要な情報を伝え、本人が希望を考えられる状態をつくることがポイントです。
育休を取りにくくする言動にも注意が必要?
制度を整えるだけでなく、上司や同僚の言動によって従業員が育休を諦めることがないよう、職場全体での理解を進めることも大切です。
例えば、男性従業員から、
「子どもが生まれるので育休を取りたいです」
と言われたとします。
そのとき、
「男性なのにそんなに休むの?」
「今休まれると困るんだけど」
といった言葉が出てしまうと、本人が制度の利用をためらってしまう可能性があります。
育児休業などの利用を理由として不利益な取扱いを示唆したり、制度の利用を妨げたり、取得を理由として嫌がらせをしたりすることは、育児休業等に関するハラスメントの問題につながる場合があります。
会社には、こうしたハラスメントを防ぐための方針の周知や相談体制の整備なども求められています。
会社として気をつけたいポイント
人事担当者が制度を理解していても、従業員が最初に相談する相手は直属の上司であることが少なくありません。
そのため、
「人事担当者だけ知っていれば大丈夫」
ではなく、管理職にも基本的な対応を共有しておくことが重要です。
会社として今のうちに確認しておきたいことは?
実際に育休の申し出があってから慌てないよう、規程・相談先・社内手続き・業務の引継ぎ方法まで一度整理しておくと対応しやすくなります。
従業員から、
「来月、子どもが生まれます」
「育休を取りたいと思っています」
と言われてから制度を調べ始めると、会社側も本人側も慌ただしくなってしまいます。
そこで、まだ対象者がいない会社でも、次のような点を確認しておくと安心です。
- 就業規則・育児介護休業規程は現在の制度に対応しているか
- 育児休業について誰が説明するのか
- 従業員からの申し出・相談窓口は決まっているか
- 個別周知や意向確認をどのように行うか
- 申出から休業開始までの社内手続きは整理されているか
- 休業する従業員の業務を誰が引き継ぐのか
- 管理職が育児休業について基本的な内容を理解しているか
- 育休取得を理由としたハラスメントを防ぐ体制ができているか
特に小規模な会社では、一人が長期間休むことによる業務への影響が気になることもあると思います。
だからこそ、育休を「休む本人だけの問題」とせず、引継ぎや業務分担まで含めて事前に考えておくことが重要です。
よくある質問
男性育休への対応では「前例がない」「企業規模が小さい」といった理由だけで判断せず、一つずつ制度と本人の状況を確認することが大切です。
Q. 今まで男性の育休取得者が一人もいません。それでも対応が必要ですか?
これまで取得実績がなかったことだけを理由に育児休業を認めないということはできません。
会社独自の福利厚生として設ける休暇とは違い、育児休業は法律に基づく制度だからです。
初めて申し出があったときに慌てないよう、規程や社内の対応方法をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
Q. 小さな会社でも育児休業への対応は必要ですか?
会社の規模だけで「育児休業には対応しなくてよい」と判断するものではありません。
ただし、制度によって対象者の要件などがありますので、実際の申し出があった場合には個別に確認する必要があります。
Q. 育休を取られると業務が回らない場合はどうすればいいですか?
育休を取得できるかどうかと、休業中の業務をどうするかは分けて考えることが大切です。
業務の属人化を減らしたり、早めに引継ぎを始めたり、業務分担を見直したりするなど、休業に備えた体制づくりを進めておきましょう。
Q. 就業規則を作ってから一度も育児関係の規程を見直していません。大丈夫でしょうか?
育児と仕事の両立に関する制度は改正が続いています。
長期間見直していない場合は、現在の制度に対応できているか一度確認しておくとよいでしょう。
まとめ
育休を取得しやすい職場をつくるには、制度を整えるだけでなく、休業する人の仕事を周囲の従業員だけに背負わせない業務体制を会社が考えることが大切です。
男性の育児休業は、特別な会社だけの話ではなくなってきています。
会社としては、育児休業の制度を理解し、個別周知や意向確認、相談体制の整備など、必要な対応を行うことが大切です。
ここからは、私が実際にお客様とお話しする中で、育休を取得しやすい職場づくりについて感じていることをお伝えします。
制度を整えることはもちろん大切ですが、それだけでは解決しにくい部分もあるように感じています。
育休を「取りづらい」「申し出にくい」と感じる背景の一つに、休む人の仕事を誰がカバーするのか、という問題があります。
例えば、一人が育休に入ったことで、その人が担当していた仕事を同じ部署の人たちで分担することになったとします。
残った従業員がそれまでと同じ仕事を続けながら、さらに休業する人の仕事も引き受けることになれば、どうしても負担は大きくなります。
そのような状況が続けば、
「育休を取る人がいると、自分たちの仕事が増えてしまう」
と感じる人が出てくることもあるでしょう。
そうした周囲の負担感が、結果として育休を申し出にくい職場の雰囲気につながってしまうことも考えられます。
ここで大切なのは、「育休を取る人」と「仕事をカバーする人」のどちらかに問題がある、と考えないことではないでしょうか。
育休によって一時的に人が少なくなるのであれば、周囲の従業員にこれまでと同じ仕事量をお願いしたままカバーしてもらうだけではなく、会社としても仕事の進め方を見直してみることが大切だと考えています。
例えば、
- 休業期間中に一時的に減らせる仕事はないか
- 業務の優先順位を変えられないか
- 他の部署から応援してもらえる業務はないか
- 人員配置を見直せないか
- 特定の人しか分からない仕事を少しずつ減らせないか
- 業務委託を活用できるものはないか
といったことを検討してみるのも一つの方法です。
もちろん、会社の規模や業務内容によっては、人員を増やしたり、仕事を減らしたりすることが難しい場合もあります。
特に人数の少ない職場では、一人が長期間休む影響は決して小さくありません。
だからこそ、「育休を取ってもらうために周囲が頑張る」ということだけではなく、育休を取る人も、その仕事を引き継ぐ人も、できるだけ無理をしなくて済む方法を会社として一緒に考えていくことが大切なのではないでしょうか。
育休を取得しやすい職場づくりというと、制度を整えたり、「育休を取得しても大丈夫ですよ」と伝えたりすることに目が向きやすいと思います。
もちろん、それらも大切な取組です。
そのうえで、実際に誰かが育休を取得したときに、周囲の従業員に負担が偏らないよう、業務量や仕事の優先順位、引継ぎ方法などについても考えておく。
そうした準備ができていると、育休を取得する本人も、周囲の従業員も、育休をより前向きに受け止めやすくなるのではないかと思います。
「育休を取る人」と「その仕事をカバーする人」を対立させないためにも、制度とあわせて、休業中の仕事をどうするのかを考えておくこと。
それも、育休を取得しやすい職場づくりの大切な一つのポイントだと考えています。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
育休を取得しやすい職場づくりには、制度を整えるだけでなく、育休を取る人も周囲の従業員も無理なく働けるよう、休業中の仕事の進め方を会社として考えておくことが大切です。
公式資料
父親の仕事と育児 両立読本(厚生労働省)
お問い合わせについて
当事務所が大切にしている労務管理の考え方
当事務所では、「労使双方が制度を正しく理解し、日頃から話し合える職場づくりが、労使トラブルの予防につながる」と考えています。
労使トラブルは、問題が起きてから対応するよりも、未然に防ぐことが大切です。
トラブルの多くは、制度を知らなかったことや、事前の認識の違いから生じます。
日頃からルールを整え、制度を正しく理解しておくことで、防げるトラブルは少なくありません。
社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。
そのため、就業規則の作成・変更や労働・社会保険の各種手続きだけでなく、日々の労務相談を通じた「予防型」の労務管理にも力を入れています。
「この対応で本当に大丈夫だろうか」
「まだトラブルにはなっていないが、一度専門家に確認しておきたい」
そのようなお悩みや、「まだ相談するほどではないかもしれない」と感じる内容でも、お気軽にご相談ください。
このようなサポートを行っています
就業規則の作成から日々の労務相談、総務・人事業務のアウトソーシングまで幅広く対応しています。
例えば、次のようなサポートをご提供しています。
- 就業規則や社内規程の作成・見直し
- 日々の労務相談
- ハラスメント防止体制の整備・ご相談
- 社会保険・労働保険の各種手続き
- 社会保険の定時決定(算定基礎届)や労働保険の年度更新などの定期業務
- 助成金のご相談・申請支援
このようなご相談をいただいています
日々の労務相談では、次のようなご相談をいただくことが多くあります。
- 担当者がいないため、人事・労務業務を任せたい
- 本業に集中できる体制を整えたい
- 制度改正への対応に不安がある
- 人事・労務について気軽に相談できる相手がほしい
人事・労務に関することでしたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
ご相談・お問い合わせ方法
ご相談・お問い合わせは、お問い合わせフォームまたは公式LINEから受け付けています。
また、法改正や制度改正など、実務に影響のある最新情報をブログで公開した際には、公式LINEでご案内しています。
制度を正しく理解し、安心して働ける職場づくりをお手伝いいたします。
ご相談・お問い合わせ
お気軽にお問い合わせください









コメント