
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、社会保険労務士の関谷です。
社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。
クリニックでは、電子カルテ、Web予約、Web問診、自動精算機、勤怠管理、シフト管理など、さまざまな分野でDX化が進んでいます。
一見すると、診療に関するDXと人事・労務のDXは別の話に見えます。しかし、実際に院内へ新しい仕組みを導入し、スタッフに定着させるという点では、考え方はよく似ています。
この記事では、人事・労務のDXを進める際の実務的な考え方をもとに、クリニック全体のDX化をどのように進めるとよいのかを整理します。
クリニックのDXでは「導入すること」より「定着すること」が大切です
クリニックのDXでは、新しいシステムを導入すること自体ではなく、日々の診療や院内業務の中で無理なく使われ続ける状態をつくることが重要です。
クリニックのDXと聞くと、まず思い浮かぶのは新しいシステムの導入ではないでしょうか。
例えば、
- 電子カルテ
- Web予約
- Web問診
- 自動精算機
- オンライン資格確認
- 勤怠管理システム
- シフト管理システム
- 院内チャット
などがあります。
どれも業務を効率化するための有効な手段です。
ただし、システムを導入したからといって、必ずしも業務が楽になるとは限りません。
クリニックでは、診療を止めることなく新しい仕組みに切り替える必要があります。
そのため、
「患者さんへの説明が増えた」
「受付だけ作業が増えた」
「看護師と受付で使い方の認識が違う」
「結局、紙とシステムの両方を使っている」
ということも起こり得ます。
DXで大切なのは、導入の有無ではなく、クリニックの日常業務の中に定着しているかという点です。
医療のDXと人事・労務DXには共通点があります
電子カルテやWeb予約などの医療DXも、勤怠管理や休暇申請などの人事・労務DXも、「人が新しい仕組みに移行する」という点では同じです。
当事務所では、人事・労務の分野でもDX化を考える機会があります。
例えば、
- 紙のタイムカードを勤怠システムに変える
- 有給休暇の申請を紙からシステムへ移す
- 給与明細をWeb化する
- 雇用契約書を電子化する
- シフト作成をシステム化する
といった取り組みです。
こうした人事・労務DXを進めるとき、単にシステムを入れれば終わりとは考えません。
まず、
「今どの作業に困っているのか」
「誰の負担を減らしたいのか」
「現在の業務フローはどうなっているのか」
「新しい仕組みを誰が使うのか」
を確認します。
これは、医療分野のDXでも同じです。
電子カルテやWeb問診は医療に関するシステムですが、実際に運用するのは医師やスタッフです。
つまり、システムの種類は違っても、導入・定着の考え方は共通しているといえます。
まずはクリニック特有の「困りごと」から考えます
クリニックのDXは、ツールから選ぶのではなく、診療や受付のどこに負担・待ち時間・重複作業があるのかを見つけるところから始めます。
クリニックでは、一般企業とは異なる業務上の特徴があります。
例えば、
- 診療時間中は患者対応を止めにくい
- 受付と診療側が連携して動く必要がある
- 急な患者対応によって予定どおりに進まないことがある
- 医師、看護師、受付で業務内容が大きく異なる
- 患者さん自身がシステムを利用する場合がある
といった点です。
そのため、DXを考えるときも「便利そうだから導入する」のではなく、まずは院内の困りごとを具体的に確認します。
例えば予約業務であれば
「電話予約が多い」
↓
「受付が電話対応に追われる」
↓
「窓口対応や会計が止まりやすい」
↓
「Web予約で一部を減らせないか」
と考えます。
Web問診であれば
「受付後に問診票を書いてもらっている」
↓
「記入待ちの時間が発生する」
↓
「スタッフが内容を転記している」
↓
「事前入力やデータ連携で負担を減らせないか」
と整理できます。
このように、「何を導入するか」ではなく「どこを改善したいか」から考えるのが基本です。
これは、人事・労務のDXでも同じ考え方です。
現場を巻き込まずに進めると定着しにくくなります
クリニックでは職種ごとに業務の見え方が異なるため、実際に使うスタッフの意見を早い段階で確認することが大切です。
クリニックのDXで特に注意したいのが、医師だけで仕組みを決めてしまうケースです。
医師から見ると便利でも、受付や看護師から見ると負担が増えることがあります。
例えばWeb問診を導入した場合でも、
受付では、
「患者さんへの案内が増えた」
看護師では、
「確認する画面が増えた」
医師では、
「診察前に情報を見やすくなった」
というように、同じシステムでも評価が分かれることがあります。
そのため、導入前に、
- 誰が使うのか
- どのタイミングで使うのか
- 今の業務のどこが変わるのか
- 誰の作業が増えるのか、減るのか
を確認します。
「便利なシステムだから使ってください」と伝えるだけではなく、診療の流れの中で本当に使えるかを確認することが重要です。
クリニックのDXは小さく始める方が進めやすくなります
診療を続けながら仕組みを変更するクリニックでは、一度に全面変更するより、対象を絞って試す方が問題点を把握しやすくなります。
クリニックでは、患者対応を続けながら新しいシステムに慣れる必要があります。
そのため、一度に多くの変更をすると、現場の負担が大きくなります。
例えば、
- 電子カルテを変更する
- Web予約を始める
- Web問診を導入する
- 勤怠システムも変更する
- 院内連絡もチャットにする
といった変更を同時に行えば、それぞれの問題点を整理することも難しくなります。
そこで、可能な範囲で小さく始めます。
例えばWeb予約であれば、
「再診患者だけ」
「特定の時間帯だけ」
「特定の診療メニューだけ」
から始める方法も考えられます。
人事・労務DXでも同じです。
いきなりすべての申請を電子化するのではなく、有給休暇の申請だけから始めるなど、小さく試す方法があります。
DXを定着させる考え方として「小さく始める」ことが一つのポイントになります。
導入後の不満や違和感を改善につなげます
DX導入後に出てくる「使いにくい」という声は、失敗と決めつけず、業務改善の材料として整理することが重要です。
システムを導入すると、スタッフからさまざまな声が出てきます。
「前の方が早かった」
「患者さんへの説明が大変」
「操作方法が分からない」
「二重入力になっている」
このような声を単なる不満として扱うのではなく、内容を分けて考えます。
例えば、
〇 操作方法が分からない → 研修やマニュアルで対応できるかもしれません。
〇 患者さんへの説明に時間がかかる → 案内方法や掲示物を改善できる可能性があります。
〇 同じ内容を二度入力している → システム連携や業務フローの見直しが必要かもしれません。
〇 特定の職種だけ負担が増えた → 業務分担そのものを確認する必要があります。
このように、現場の不満を改善へつなげることが重要なポイントとしてあげられます。
DXは、導入時点で完成するものではなく、使いながら調整していくものと考えた方が実務には合います。
人事・労務DXで使っている考え方は医療DXにも応用できます
人事・労務DXでも医療DXでも、「目的を決める・現場を確認する・小さく試す・改善する」という基本的な進め方は共通します。
人事・労務のDXと医療現場のDXでは、使用するシステムも目的も異なります。
しかし、進め方には共通点があります。
人事・労務DXであれば、
「勤怠集計に時間がかかる」
↓
「勤怠システムを検討する」
↓
「スタッフの打刻方法を確認する」
↓
「一部で試す」
↓
「運用を見直す」
という流れです。
医療DXであれば、
「予約電話が多い」
↓
「Web予約を検討する」
↓
「受付や患者さんの使い方を確認する」
↓
「一部から試す」
↓
「予約枠や案内方法を調整する」
という流れになります。
対象は違っても、
課題を見つける
↓
目的を決める
↓
現場を確認する
↓
小さく試す
↓
改善する
という流れは同じです。
当事務所では、人事・労務のDXを考える場合も、「システムを入れること」だけではなく、実際の業務やルールに合っているかを確認することを大切にしています。
この考え方は、電子カルテや予約システムなど医療分野のDXを進める際にも参考になるのではないかと思います。
クリニックでDXを進めるときの確認順序
クリニックのDXは、現在の課題から導入後の見直しまで順番に整理することで、現場への負担を抑えながら進めやすくなります。
実際にDXを考えるときは、次の順番で整理すると分かりやすくなります。
予約、受付、問診、会計、診療情報の共有、勤怠など、時間や手間がかかっている部分を探します。
「Web予約を入れる」ではなく、「予約電話を減らす」など、目的を具体的にします。
院長、医師、看護師、受付など、誰の業務が変わるのかを確認します。
システム導入後だけでなく、今どのように業務を行っているのか把握します。
対象患者、診療メニュー、スタッフなどを限定して試します。
誰が、いつ、どのように使うのか院内で統一します。
当初の課題が改善されたか、別の負担が生まれていないかを確認します。
この順番は、医療DXだけでなく、人事・労務DXを進める際にも共通して使える考え方です。
よくある質問
クリニックのDXでは、最新システムを入れることより、自院の課題と現場に合った仕組みを選ぶことが大切です。
Q.院長が詳しくない分野でもDXを進められますか?
院長先生自身がシステムの専門家になる必要はありません。
ただし、「何を改善したいのか」「どのような状態を目指すのか」という方向性は、経営側で整理しておく必要があります。
そのうえで、現場のスタッフやシステム会社などと役割を分担すると進めやすくなります。
Q.スタッフから反対があった場合は導入しない方がよいですか?
反対があることだけで判断する必要はありません。
操作への不安なのか、業務量が増える懸念なのか、変更する理由が伝わっていないのかを確認することが大切です。
理由が分かれば、研修や運用変更によって解決できる場合もあります。
Q.医療DXと人事・労務DXは一緒に考えた方がよいですか?
システムそのものは分けて考える必要がありますが、進め方は共通しています。
特に、現場の業務を確認すること、小さく試すこと、導入後に改善することは、どちらにも共通する重要なポイントです。
まとめ
クリニックのDXも人事・労務DXも、システムありきではなく、現場の課題から考え、試しながら改善することが定着のポイントです。
クリニックのDXでは、電子カルテやWeb予約などの医療システムそのものに目が向きやすくなります。
しかし、実際に定着するかどうかは、
- 何を改善したいのか
- 誰の業務が変わるのか
- 現場の流れに合っているのか
- 導入後に改善できる体制があるのか
といった部分に左右されます。
これは、勤怠管理や休暇申請など人事・労務のDXでも同じです。
システムの種類は違っても、「課題を見つける→目的を決める→現場を確認する→小さく試す→改善する」という流れは共通しています。
クリニック全体のDXを考える際にも、まずは一つの困りごとから整理し、実際に使う人の声を確認しながら進めていくことが大切です。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
人事・労務DXでも医療DXでも、ツール導入を目的にせず、現場の課題を起点に小さく試しながら改善していくことが、DXを定着させる基本的な考え方です。
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当事務所が大切にしている労務管理の考え方
当事務所では、「労使双方が制度を正しく理解し、日頃から話し合える職場づくりが、労使トラブルの予防につながる」と考えています。
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トラブルの多くは、制度を知らなかったことや、事前の認識の違いから生じます。
日頃からルールを整え、制度を正しく理解しておくことで、防げるトラブルは少なくありません。
社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。
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「この対応で本当に大丈夫だろうか」
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