
こんにちは、新潟市で活動しているおっきなでんしゃ社会保険労務士事務所、社会保険労務士の関谷です。
社会保険労務士として、法令に基づいた適切な労務管理を通じて、働く方が安心して働ける職場づくりと、経営者が本業に専念できる環境づくりをサポートしています。
給与明細を見ると毎月「所得税」が差し引かれていますが、この金額だけで1年間の所得税が決まるわけではありません。一般的には、毎月の給与から所得税を源泉徴収し、年末調整でその年の所得税額との過不足を精算します。
今回は、財務省が令和8年7月に発行した「もっと知りたい税のこと」の内容も参考に、給与所得者の所得税がどのような流れで計算されるのか、給与所得控除や所得控除、税率の考え方まで整理します。
所得税は毎月の給与でどう扱われている?
給与所得者の所得税は、毎月の給与から会社が源泉徴収し、年末調整で1年間の所得税額との過不足を精算します。
給与明細を見ると、毎月「所得税」という項目で一定の金額が給与から差し引かれています。
これは、会社が給与を支払う際に所得税を差し引き、本人に代わって納付する「源泉徴収」という仕組みによるものです。
毎月の給与から差し引く所得税は、その月の給与額や扶養親族等の状況などに応じて、税額表に基づいて計算します。
つまり、会社が毎月、その従業員の1年間の所得税を最終的に確定させているわけではありません。
まずは毎月の給与などから所得税を源泉徴収し、その後、一般的には年末調整によって1年間の所得税額との過不足を精算する、という流れになっています。
この流れを先に知っておくと、「給与から毎月引かれている所得税」と「1年間の所得税」の関係が分かりやすくなります。
年末調整では何をしている?
年末調整では、1年間の給与や各種控除などをもとに所得税額を計算し、それまでに源泉徴収した所得税との過不足を精算します。
毎月の給与から所得税を源泉徴収していても、その合計額がその人の1年間の所得税額と必ず一致するとは限りません。
そこで、一般的な給与所得者については年末に「年末調整」を行います。
年末調整では、その年に支払われた給与の合計額や、従業員から提出された各種の申告書などをもとに、その年の所得税額を計算します。
そして、
1年間の所得税額と、それまでの給与や賞与から源泉徴収してきた所得税額を比べて、その差額を精算します。
源泉徴収した所得税が多ければ差額を還付し、不足していれば追加で徴収するのが基本的な流れです。
給与明細を見ると毎月所得税が差し引かれているため、その都度税額が確定しているようにも見えます。
しかし実際には、
毎月の源泉徴収 → 年末調整による精算
という流れで考えると分かりやすいでしょう。
なお、すべての人について年末調整だけで所得税に関する手続きが完了するわけではなく、状況によっては確定申告が必要になる場合もあります。
1年間の所得税はどのように計算される?
給与所得者の所得税は、給与収入から給与所得控除や所得控除などを差し引き、その後の金額をもとに税額を計算します。
では、年末調整で1年間の所得税を計算するとき、そもそも税額はどのような考え方で決まるのでしょうか。
「もっと知りたい税のこと」では、給与所得者の所得税額を計算する流れが図で紹介されています。
大まかに整理すると、次のような流れです。
まず、年間の給与収入から「給与所得控除」を差し引いて、給与所得の金額を計算します。
次に、給与所得から基礎控除や配偶者控除など、その人の状況に応じた所得控除を差し引きます。
各種の所得控除を差し引いた後の課税所得に対して税率を適用し、税額を計算します。
さらに、適用できる税額控除などがある場合には、それらを反映して納付する税額を求めます。
つまり、所得税は単純に、
年間の給与収入 × 所得税率
で計算するものではありません。
給与収入からいくつかの段階を経て、所得税の計算につながっていきます。
給与所得控除とは?
給与所得控除は、給与収入から給与所得を求める際に差し引くもので、「収入」と「所得」の違いを理解するポイントになります。
所得税を理解するときに知っておきたいのが、「給与収入」と「給与所得」は同じではないということです。
例えば、会社から1年間に受け取った給与や賞与などの収入が、そのまま所得税を計算する際の「給与所得」になるわけではありません。
給与収入から給与所得控除を差し引くことで、給与所得を計算します。
イメージとしては、
給与収入 − 給与所得控除 = 給与所得
です。
そのため、
年収=そのまま所得税を掛ける対象となる金額
ではありません。
日常会話では「収入」と「所得」を同じような意味で使うこともありますが、所得税について考えるときには、この2つを分けて理解することがポイントです。
所得控除にはどのようなものがある?
所得税には本人や家族の状況などを税額計算に反映するためのさまざまな所得控除があり、同じ給与収入でも税額が同じになるとは限りません。
給与所得を計算したら、そこからさらに所得控除を差し引きます。
個人のさまざまな事情を踏まえるための主な人的控除として、
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 特定親族特別控除
- 障害者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
などがあります。
これらは、すべての人に同じように適用されるわけではありません。
本人の所得や配偶者・扶養親族などの状況によって、適用できる控除は異なります。
例えば、給与収入が同じ2人であっても、適用される所得控除が異なれば、最終的な所得税額が同じになるとは限りません。
年末調整で従業員から扶養親族などについて申告してもらうのも、こうした情報を税額の計算に反映するためです。
所得税の税率はどのように決まる?
所得税では、所得が高くなるにつれて、その高くなった部分に段階的に高い税率を適用する仕組みが採用されています。
所得税では「超過累進税率」という仕組みが採用されています。
言葉だけを見ると難しく感じますが、ポイントは、
所得が一定の金額を超えると、超えた部分により高い税率が適用される
ということです。
冊子では、令和8年分の所得税について、5%から45%までの税率区分が掲載されています。
ここで注意したいのが、
「20%の税率が適用される所得になったら、所得全体に20%が掛かる」
というわけではないことです。
所得が増えて一つ上の税率区分に入ったとしても、所得全体にその高い税率が適用されるのではなく、その区分に該当する部分について高い税率が適用されます。
この点は、所得税について勘違いされやすいところです。
所得税で勘違いしやすいポイント
毎月引かれる所得税と1年間の所得税、給与収入と給与所得、税率の適用方法を分けて考えると、所得税の仕組みを理解しやすくなります。
毎月引かれた所得税だけで1年間の税額が決まるわけではない
給与から毎月所得税が差し引かれているため、その金額がその都度確定しているように感じるかもしれません。
しかし、一般的には年末調整で1年間の所得税額を計算し、それまでに源泉徴収した所得税との過不足を精算します。
そのため、毎月の源泉徴収と年末調整をセットで考えることがポイントです。
年収にそのまま所得税率を掛けるわけではない
「年収500万円なら500万円に税率を掛ける」という仕組みでもありません。
給与収入から給与所得控除を差し引き、さらに所得控除などを反映して課税所得を求め、その金額をもとに税額を計算します。
税率が上がっても所得全体に高い税率が掛かるわけではない
所得税は段階的に税率が高くなる仕組みです。
一つ上の税率区分に入ったからといって、それまでの所得を含めた全額に高い税率が適用されるわけではありません。
この3つを区別して考えると、給与明細や年末調整に記載されている所得税についても理解しやすくなります。
会社で所得税を扱うときに確認したいこと
会社では毎月の源泉徴収と年末調整を行うため、給与額だけでなく従業員から提出される申告書などの情報を適切に確認することが重要です。
会社にとって所得税は、給与計算と密接に関係しています。
毎月の給与や賞与では所得税を源泉徴収し、年末には対象となる従業員について年末調整を行います。
そのため、実務では例えば、
- 入社時などに必要な申告書が提出されているか
- 扶養親族等の状況に変更がないか
- 年末調整に必要な申告書や証明書がそろっているか
- 給与・賞与から適切に源泉徴収しているか
- 年末調整の対象となる従業員か
といった点を確認する必要があります。
特に年末調整では、従業員から提出された情報が税額計算に関係します。
そのため、単に年末に計算処理をするだけではなく、必要な書類を案内し、期限までに提出してもらえるよう準備することも会社の実務として重要です。
また、従業員から、
「どうして今月の所得税が先月と違うのですか?」
「年末調整でお金が戻ってきたのはなぜですか?」
と聞かれることもあります。
その際も、
毎月は源泉徴収を行い、年末調整で1年間の所得税額との過不足を精算している
という全体の流れから説明すると、伝わりやすくなります。
なお、個別具体的な税務判断が必要な場合には、税務署や税理士など税務の専門家への確認が必要です。
よくある質問
給与の所得税は毎月の源泉徴収だけを見るのではなく、年末調整や1年間の所得税額まで含めて考えることがポイントです。
Q1. 毎月給与から引かれている所得税は確定した金額ではないのですか?
毎月の給与では、その月の給与額や扶養親族等の状況などに応じて、税額表に基づいて所得税を源泉徴収します。
一般的には、その後の年末調整で1年間の所得税額を計算し、それまでに源泉徴収した所得税との過不足を精算します。
Q2. 年末調整で所得税が戻ってくるのはなぜですか?
1年間に給与などから源泉徴収した所得税の合計額が、年末調整で計算したその年の所得税額より多い場合には、その差額が還付されます。
反対に、源泉徴収した金額が不足している場合には、追加で徴収されることがあります。
Q3. 所得税率が上がると、所得全体に高い税率が掛かりますか?
いいえ。
所得税では、一定の金額を超えた部分について段階的に高い税率が適用されます。
所得全体に突然高い税率が掛かる仕組みではありません。
Q4. 年末調整をすれば確定申告は必要ありませんか?
年末調整によって所得税の精算が完了する給与所得者も多くいますが、すべての人が年末調整だけで完了するわけではありません。
給与以外の所得がある場合など、状況によって確定申告が必要になることがあります。個別の判断については、税務署や税理士などにご確認ください。
まとめ
給与所得者の所得税は、毎月の給与で源泉徴収し、年末調整で1年間の税額との過不足を精算するという一般的な流れを知ると理解しやすくなります。
今回は、財務省「もっと知りたい税のこと(令和8年7月)」の所得税に関する内容をもとに、給与所得者の所得税について整理しました。
給与所得者の場合、毎月の給与では税額表に基づいて所得税を源泉徴収します。
そして一般的には、年末調整でその年の給与や各種控除などを反映して1年間の所得税額を計算し、それまでに源泉徴収した所得税との過不足を精算します。
1年間の所得税を考える際には、給与収入にそのまま税率を掛けるわけではありません。
給与収入から給与所得控除を差し引き、さらに各種の所得控除を反映したうえで税率を適用する、という基本的な流れがあります。
そのため、給与の所得税については、
「毎月いくら引かれるのか」だけではなく、「1年間の所得税をどのように計算し、年末にどのように精算するのか」まで含めて考える
と、全体像をつかみやすくなります。
会社側もこの流れを把握しておくことで、給与計算や年末調整を行う意味や、従業員から所得税について質問された際の確認ポイントを整理しやすくなります。
なお、税制や年末調整の取り扱いは改正されることがあります。個別具体的な税務判断については、税務署や税理士など税務の専門家へご確認ください。

社会保険労務士 関谷聡のこの記事のポイント
給与の所得税は、毎月の源泉徴収、年末調整による精算、給与所得控除や所得控除を反映した年間税額の計算という流れで捉えると、仕組みを理解しやすくなります。
参考資料
もっと知りたい税のこと 令和8年7月(財務省)
冊子では、所得税について、給与収入から給与所得控除を差し引き、さらに人的控除等を差し引いて課税所得を求め、税率を適用するという給与所得者の税額計算のイメージが掲載されています。また、所得の大きさに応じた負担と、家族構成などの事情に応じた配慮ができる仕組みであると説明されています。
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